2005年10月20日(木)「しんぶん赤旗」

主張

靖国参拝と日本外交

ゆきづまりさらにひどくする


 小泉首相の靖国神社参拝(十七日)が日本外交のゆきづまりをさらにひどくしています。

 中国外務省は、今月下旬に予定されていた町村外相の訪中を「受け入れがたい」と表明。韓国の外交通商相は、今月下旬の訪日は「適切でない」とのべています。両国との首脳会談の見通しがたたなくなり、六カ国協議への悪影響も懸念されています。

■あまりにごうまん

 小泉首相は、「中韓両国との関係悪化の責任を棚上げしているのではないか」と問われ、「心の問題に他人が干渉すべきでない。ましてや、外国政府が、…いけないとかいう問題ではない」と、批判を内政干渉であるかのようにいっています。

 しかし、小泉首相の靖国神社参拝は、韓国の盧大統領や中国の胡主席との会談でもとりあげられ、重大な外交問題となってきました。

 政府のトップである小泉首相が靖国神社を参拝すれば、侵略戦争や植民地支配を正当化する靖国神社の戦争観にお墨付きを与えたとみられるのは、当然のことです。

 中国や韓国は、日本の侵略戦争と植民地支配で多大の犠牲を強いられた国であり、いまも深い傷跡が残り、人々に記憶されています。

 小泉首相の態度は、侵略戦争の正当化にくみする行動をとりながら、その犠牲になった国の政府や国民の気持ちを一切無視して、“つべこべいうな”というに等しいごうまんなものです。

 小泉首相は「二度と戦争をしない決意」だともいいますが、もしそれが本気なら、外交関係の悪化につながることが明白な靖国参拝などは、もっともやってはいけないことです。どんな問題でも、理性的に話し合って解決する姿勢を貫いてこそ、平和を確保することができます。

 首相は、戦後六十年にあたる今年八月十五日の談話で、「植民地支配と侵略」によって「アジア諸国の人々」に「多大の損害と苦痛を与え」たことに「反省」と「おわび」を表明しました。靖国神社参拝強行は、その言葉を裏切ることになり、日本の対外的信用を落とすだけです。

 過去の侵略戦争の誤りを二度とくりかえさない平和国家として進むことは、戦後日本の立脚点です。日本国憲法の平和原則が基盤になっています。この原点をふまえてこそ、紛争問題も平和解決し、アジア諸国との善隣友好、共存の関係を広げ、この地域の平和と安定の関係構築に前進できます。

■米欧からも厳しい目

 小泉首相の靖国参拝は世界的にも問題視され、批判されています。

 米政府は、中国や韓国の批判について、「歴史」問題が懸念の根拠であることを「理解」しつつ、敬意をもった対話での解決を要望しています(国務省報道官)。ニューヨーク・タイムズは、「首相は日本軍国主義の最悪の伝統を公然と奉ずる挙に出た」と厳しく批判しています。そのうえで、「日本は、再び帝国支配の道に立ち戻ることはないにせよ、過去六十年の軍事、対外政策の制限をある程度とりはらいつつある」と警戒の目を向けています。

 欧州からは、「予期されたように非難と憤激の連鎖をひきおこした」小泉首相の靖国参拝がアジアの「和解と協力」を妨げかねない(フィナンシャル・タイムズ)、との懸念が伝えられています。

 首相の靖国参拝は、日本をアジアと世界から孤立させる、外交上も重大な誤りであることを直視しなければなりません。


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