2005年10月20日(木)「しんぶん赤旗」

米産牛 輸入の前提“お粗末”

査察体制ほとんどなし


 日本政府が米国産牛肉輸入再開のための条件としている米国内の“BSE(牛海綿状脳症)安全対策”にたいし、日本政府にはほとんど査察体制がなく、月1回でも査察率はわずか3%程度。実効性はない――。19日の衆院農水委員会で、日本共産党の高橋千鶴子議員はそんな実態を明らかにしました。日本政府が急ぐ輸入再開の前提そのものが揺らいでいます。


■高橋議員が追及

 政府は現在アメリカの圧力を受け、米国産牛肉の早期輸入再開をめざしています。そのために、内閣府の食品安全委員会に「生後二十カ月以下」「危険部位の除去」という条件をつけ、米国産牛肉と国産牛肉のリスクは「同等」かどうかの評価を求める諮問をしています。食品安全委員会の審議では、輸入条件の完全順守が大前提となってきました。しかし、その前提の実効性にはこれまでも強い疑問が指摘されており、政府は「査察の実施で実効性をあげる」(農水省の石原葵事務次官)などと言明してきました。

 しかし、高橋議員によると、米国では、一日あたり一施設で約五千頭と畜されているのに、査察にあたる日本政府の人員体制は農水省動物検疫所の家畜防疫官二十三人と厚生労働省監視安全課の職員二人だけです。

 米国産牛肉輸入を含む農水省の査察活動の来年度予算要求は約四千万円です。

 動物検疫所の家畜防疫官は、米国産牛肉査察だけでなく、口蹄(こうてい)疫が発生した中国などからの輸入条件の査察も任務です。

 しかも、米国内での日本向け米国産牛肉の処理施設は約三十施設。訪米して毎日査察すると年間約一万九百五十回の査察が必要になる計算です。

 高橋議員は、「仮に十人が月一回米国に出向いて三十施設を査察しても査察回数は年三百六十回。査察率はせいぜい3・2%にすぎない」と指摘。航空運賃など旅費を考えるだけで予算オーバーになるような「人員と予算でまともな査察となり、担保できるのか」とただしました。

■政府「これから詰める」

 農水省の中川坦消費・安全局長は、「(月齢判定の)枝肉格付けなどを常駐に近い形でみるわけではない」「頻度その他はこれから詰めるところ」と答弁。多くを「書類」の審査などに頼る意向を示しました。

 岩永峯一農水相は「(再開は)食品安全委員会の答申を踏まえていく」と答えました。


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