2005年10月23日(日)「しんぶん赤旗」

“侵略の罪認めぬ遊就館”

米紙が靖国ルポ

歴史をわい曲している

歴史観に注目


 【ワシントン=鎌塚由美】米国の日刊紙クリスチャン・サイエンス・モニター二十一日付は東京発の特派員電で、靖国神社の戦争博物館である遊就館ルポを掲載しました。小泉首相の靖国参拝が近隣諸国の厳しい抗議を引き起こす「主な原因」として遊就館の展示を紹介。さらに、「日米開戦は強要された」とする靖国史観を取り上げています。

 小泉首相が参拝は内政問題だと主張し、参拝を続けるうちに世界中が飽きて忘れるだろうと首相周辺が期待していることを同紙は挙げ、これが実現しないおもな原因は遊就館にあると述べています。遊就館の「罪を認めない国粋主義、天皇崇拝、軍隊賛美」は、「戦後の日本が『学んだ教訓』についてアジアの人々がなぜ懸念し続けているのかの根拠を如実に示している」と指摘しています。

 同紙は全米各地に購読者を持ち、評論やニュース解説に重点を置いている新聞です。

 米紙クリスチャン・サイエンス・モニター二十一日付はさらに遊就館の歴史観を詳しく紹介しています。

 中国や朝鮮半島に対する日本の侵略はロシアのボリシェビキの思想や欧州の植民地主義からアジアを解放し守るためで、日本の真珠湾攻撃はルーズベルト米大統領の「陰謀」によって「強要された」と遊就館が主張し、日本軍による虐殺、朝鮮人や中国人の慰安婦・性奴隷、拷問にかけられた捕虜に言及していないことも指摘。遊就館で言及されているのは「日本防衛のために殉死した英雄だけ」だと批判しています。

 同紙はまた、遊就館の展示の変遷を知る米国の学者リチャード・ビッツィンガー氏(安保研究アジア太平洋センター)が、展示は「歴史修正主義であり、わい曲である」としていることを伝えています。例として、南京大虐殺の展示をとりあげ、日本軍が傷つけたのは「(命令に)従わなかった城外の人々だけ」であり、その後、「人々の生活に平和が戻った」などと表記していることを紹介しています。

 同紙は、日本の戦争での行いが学校で教えられていないことを指摘する学者の見方も引いて、小泉首相の靖国神社参拝は、「日本は無実だとする潮流を正当化することになる」と批判。大東亜戦争の肯定が、「今、『私的なもの』だといって同じ場所に参拝する小泉首相によって、磨き上げられた形であらわれている」と厳しく指摘しました。

 同紙は別項で、遊就館が主張する日米開戦の経緯に言及。「いかに日本は戦争を『強要された』か」と題し、「ルーズベルトに残された道は、資源の少ない日本を禁輸で追い詰めて開戦を強要する以外になかった。参戦によってアメリカ経済は完全に復興した」と述べていることを取り上げています。


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