2005年10月24日(月)「しんぶん赤旗」
テロ特措法延長 あす採決狙う 参院委
政府、核心に答えず
政府・与党は、米軍の「対テロ」報復戦争への支援を定めたテロ特措法の一年延長案の成立を強行するため、二十五日の参院外交防衛委員会で同案を採決しようとしています。委員会での審議は、二十五日の質疑を含め衆参両院合わせてわずか四日間。しかも政府は、法案の核心にかかわる疑問、問題点に何ら答えていません。(竹下岳)
■なぜ「一年」か
まず、なぜ一年延長かという問題です。
「テロとの戦いは長期に及ぶが、情勢が流動的なため、一年が妥当と判断した」
細田博之官房長官は与野党議員から一年延長の理由をただされるたびに、こう繰り返すだけです。
二〇〇一年十月に成立したテロ特措法は二年間の時限立法ですが、政府・与党は〇三年に二年延長を強行。来月一日に再び期限を迎えます。
しかし細田長官の説明だと、テロとの戦いは「長期に及ぶ」のに一年後の撤退もあり得ることになり、根本的に矛盾します。
■「ニーズ」は?
現在、海上自衛隊はテロ特措法に基づき、インド洋で、テロリストなどに対する「海上阻止行動」(MIO)を実施する米艦船などに給油を行っています。その「ニーズ」があるのかも問題です。
海自の給油量は二、三年前と比べて激減しています。大野功統防衛庁長官は「艦船が小型化しているからだ。給油回数は変わらない」と言うものの、回数にしても、今年三月以降は低い水準で推移している上、ほぼ毎月、前月を下回り続けています。
「一年前は大きな麻薬船を発見していたが、最近は洋上で麻薬も外国人戦闘員も大して発見していない」。米中央海軍のニコラス司令官は九月二十二日、MIOの状況について、こう語っています。
日本共産党の緒方靖夫議員は二十日の参院外交防衛委員会でこの発言を紹介して政府をただしましたが、明確な答弁はありませんでした。
■イラク戦支援
米軍のイラク作戦への脱法的な支援を行っている―。イラク戦争に参加した米空母キティホークの艦長が「海自から燃料を受け取った」と証言して以来、繰り返し指摘されてきた問題です。
実際、ニコラス司令官によると、MIOに参加している艦船四十五隻のうち三分の二は米艦船で、しかも大部分はイラクに近いペルシャ湾内で活動しています。
中東に展開している米艦船は通常、イラク作戦と「対テロ」作戦を兼務しており、その線引きは困難です。
大野長官は「別の活動で空っぽになってインド洋に来た米艦船への給油をどう考えるか、議論しなければならない」と述べ、あいまいさが残されていることを認めています。
■テロ減ったか
「アフガニスタンの治安は不安定であり、特に南東部は懸念すべき状況だ」。外務省の吉川元偉中東アフリカ局長は十八日の衆院イラク特別委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員の質問にこう答えました。
米軍がアフガンやその周辺と中東で「対テロ」戦争を開始してから四年がたちました。しかしこの間、アフガンやイラクの治安情勢はいっそう悪化。世界からテロの脅威はなくなるどころか、拡大しています。実際、テロによる民間人の犠牲者は年を追って増大しています。
報復戦争というやり方は、テロの温床を拡大するだけです。しかし政府はこの問題についても何ら明確な回答を示していません。