2005年10月28日(金)「しんぶん赤旗」
学生無年金障害者が勝訴
発症さかのぼって認定
東京地裁
二十歳を過ぎた学生の国民年金加入が任意だった当時に、未加入のまま統合失調症になり、障害基礎年金の支払いを拒否された東京都内の男性二人が国などに不支給処分の取り消しと、一人二千万円の損害賠償を請求した訴訟で東京地裁(大門匡裁判長)は二十七日、「発症は二十歳前だったと認められる」として処分を取り消しました。
原告側代理人によると、初診日が成人になってからの精神障害について、発症時期を二十歳未満にさかのぼって認定した司法判断は初めて。
訴えていたのは、都内在住の三十七歳と四十五歳の男性。
原告側は、二十歳を過ぎる前から病気は発症しており、医師の診断を受ける状況にあったと主張。大門匡裁判長は、「事後的でも、二十歳前に受診が必要だったと認められれば、初診日要件を例外的に拡張解釈することが許される」と指摘。「発症に気付きにくく偏見も根強い統合失調症は、受診まで長期化する特質があり、画一的な要件適用は合理的でない」とのべました。
一方、無年金学生の放置を憲法違反と主張した国家賠償請求については「処分取り消しで権利侵害はなくなった」として、憲法判断せず、棄却しました。
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■原告弁護団
■画期的な判決
「うれしい」「報われた」――。原告の二人の男性は、こう喜びを表しました。判決後、東京地裁内で行った記者会見で原告弁護団の池原毅和弁護士は「無年金の精神障害者の救済を大きく広げる画期的な判決」と強調しました。
判決後の記者会見は、極度の緊張を伴うため原告二人は欠席。二人を精神面や事務などで支援してきた精神保健福祉士の中住孝典さんは「発症と初診日がかさならないという精神障害の特性をしっかりと認識した判決」と評価しました。
判決後の報告集会に参加していた原告の男性(45)は「裁判で昔のことなどを思い出さないといけないことがあり、つらいときもあったが、報われた」と話しました。もう一人の原告の男性(37)も「うれしい。国は控訴しないでほしい」と語りました。