2005年11月1日(火)「しんぶん赤旗」
国民には痛みと負担
第3次小泉改造内閣 新布陣でなにを狙う
三十一日発足した第三次小泉改造内閣。小泉純一郎首相は同内閣で「改革の総仕上げ」をもくろんでいます。安倍晋三官房長官も「構造改革の方向性は定まっている。改革を実現していく内閣だ」とのべました。改造内閣・新執行部で何をねらうのか、みてみました。
■大増税への道筋をつける
「今年の税制『改正』で(所得税の定率減税廃止を)半分やった。景気もだいぶ良くなってきたので、(残っている定率減税の)半分(の廃止も)もやらないといけない」。谷垣禎一財務相は十月二十三日の民放番組でこう明言しました。
「改革の総仕上げ」と小泉首相が位置付ける二〇〇六年度予算編成と税制「改正」。歳出削減として狙われる医療改悪とともにたくらまれているのは、定率減税全廃(所得税は〇七年一月、住民税は同六月)や「第三のビール」増税などの庶民増税です。
小泉首相は「小さな政府を作らなければ、さもなくば大増税になる」(六月七日、経済財政諮問会議)と発言。歳出「改革」次第で、消費税率の引き上げ幅が決まるとの考えを示唆しています。
小泉氏はこれまで、「(自民党総裁任期が切れる〇六年九月までの)自分の任期中は(消費税を)上げない」と公言してきました。「歳出歳入一体の改革」の名のもとで、年金、介護、医療などを徹底して改悪した上で、次期首相に消費税増税をたくす構えです。「(次期首相が)誰になっても(消費税増税は)避けて通れない道」(谷垣氏、二十三日)。〇六年秋から本格化する消費税増税論議。改造内閣は、「ポスト小泉」候補を庶民大増税で競わせる内閣です。
■新執行部で改憲へ加速
小泉首相は自衛隊の憲法上の位置付けについて「自衛隊が任務を立派に遂行できるよう内外の環境整備に全力をあげる」(三十日、航空観閲式)と訓示。「自衛軍」を明記する憲法改定に強い意欲を示すなど、自民党の新執行部の対応が注目されます。
自民党の改憲の狙いは、「自衛軍の保持」を明記することで、海外での武力行使の歯止めになってきた九条二項を削除することです。米軍再編の中間報告に明記されたように地球規模で共同作戦を可能にするためです。
当面は、十一月二十二日の立党五十周年記念の党大会で新憲法草案を正式に発表。来年の通常国会には、改憲のための手続き法となる国民投票法案を提出しようとしています。そのために、民主党、公明党と法案作成の協議を進めようとしています。
中川秀直政調会長は「憲法については、与野党で超党派でとりくむべきもの」とのべ、民主、公明との合意形成に意欲を示しました。しかし、国民のなかでは九条改憲反対が多数。新執行部が改憲日程を加速させれば国民世論との矛盾をいっそう深めることになります。
■財界要求の医療改悪推進
年金、介護と連続して社会保障改悪をおこなってきた小泉内閣。来年の通常国会で法案を提出するのが医療制度改悪です。「医療費抑制」をかかげ、患者負担増、公的保険の範囲縮小などを、財界の要求にこたえていこうとしています。
厚生労働省の試案では、二〇二五年度の医療給付費を四十九兆円に抑制するため、高齢者医療の窓口負担引き上げ、療養病床に入院する高齢者の食費・居住費の自己負担などを盛り込んでいます。日本経団連は同試案では「不十分だ」として、医療給付費をGDP(国内総生産)の5%台(二五年度で四十二兆円)に抑えるよう提案。厚労省案以上の高齢者の窓口負担増、入院時の食費・居住費の自己負担の範囲拡大、医療費の一定額(千円)までを保険の対象外とする保険免責制の導入、診療報酬の大幅引き下げなどを求めています。こうした財界要求をストレートに反映させるための体制です。
国民に痛みをおしつける「改革」の連続で、国民からの反発は必至です。
国・地方財政の「三位一体改革」で焦点となっている生活保護費、児童扶養手当の国庫負担率(現行四分の三)の引き下げについても、全国知事会など地方の反対を押し切って、推進する構え。地方との矛盾も拡大します。
■米軍再編で安保体制拡大
日米両政府が二十九日に合意した在日米軍再編の「中間報告」は、この間進めてきた日米安保体制の地球的規模での拡大=大改悪をさらに具体化し、深化させる方策を打ち出しました。
これを受けて小泉改造内閣は、米軍の軍事作戦を支援するために自衛隊をいつでも海外派兵できる恒久法の制定や、日米軍事協力の指針(ガイドライン)改定などを進めていくとみられます。
今回の「中間報告」を受け、十二月に期限切れとなる自衛隊のイラク派兵についても継続の方向が強まっています。
来年三月の在日米軍再編の「最終報告」とりまとめに向け、基地強化に反対の声をあげている関係自治体との矛盾は深まるばかりです。
アジアとの関係では、首相自身の靖国参拝で中国や韓国との関係が最悪の状態となっています。中韓両国は年末に向けて予定されていた首脳会談の開催を「現状では厳しい」と拒否。十二月に初めて開かれる東アジア首脳会議への影響も懸念されています。
靖国参拝に固執すればするほど、小泉外交の八方ふさがりは深刻化するだけです。
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