2005年11月2日(水)「しんぶん赤旗」
課税最低限 欧米諸国と比べると?
〈問い〉 欧米と比べると、日本の課税最低限は高いのですか、低いのですか?(東京・一読者)
〈答え〉 課税最低限とは「生計費非課税」、つまり最低限の生活費には税をかけないという考えにたったものです。
この課税最低限について、政府税調はつい最近まで、「日本の課税最低限は欧米諸国に比べて高すぎる。一番高い」と宣伝してきました。そして、それを理由に03年の「税制改正」で配偶者特別控除を廃止しました。
ところが、昨年、今年の課税最低限を、欧米と比べると、高いどころか最低になっています。
サラリーマン4人世帯の課税最低限を円換算で比較すると、アメリカは357万円(子どもが2人とも17歳未満の場合は446万円)、イギリスは359万円、ドイツが500万円、フランスが402万円です。日本は325万円なので、5カ国のなかで一番低くなっています。
独身サラリーマンの場合、現在の課税最低限が114万4千円ですが、今度の政府税調が打ち出した配偶者・扶養・特定扶養控除すべてを廃止した場合、4人家族なのに、独身者並みの年間114万4千円=毎月10万円以下ということになります。
生活保護の基準では、東京に住む4人家族だと、生活扶助の基準額が月19万円くらい。それに住宅扶助や教育扶助がプラスされます。つまり、課税最低限が月10万円以下ということは、生活保護の基準額の半分以下ということになります。
「生計費非課税」の一番基本になるのは、基礎控除です。その額が日本は欧米諸国と比べて38万円と非常に低いのです。ドイツは、基礎控除は103万円です。実は、ドイツも92年までは50万円くらいでしたが、憲法裁判所が、この基礎控除は低すぎて最低生活費に不足し憲法違反だと判決したため、ドイツ政府は引き上げたのです。イギリスも94万円。両国と比較して日本の38万円という基礎控除は、憲法25条をもつ持つ国にふさわしくない額であることは明らかです。
日本の場合、基礎控除があまりに低すぎるので、給与所得控除や配偶者控除、扶養控除などが、基礎控除の少なさを補う役割を果たしてきました。その各種控除の廃止・縮小がねらわれています。(垣)
〔2005・11・2(水)〕