2005年11月5日(土)「しんぶん赤旗」
鳥取県の人権条例どう考える?
〈問い〉 鳥取県の人権条例どう考えますか?(兵庫・一読者)
〈答え〉 鳥取県議会で10月12日に採択された「人権侵害救済推進及び手続に関する条例」(人権救済条例)は、人権救済のうえで多くの問題をもっています。
条例は、差別的言動、虐待、セクハラ的な言動などのほか、名誉や社会的信用を低下させる目的で誹謗・中傷したり、プライバシー情報を広めたりする行為など8項目の人権侵害の禁止をあげ、人権侵害救済推進委員会は県民の申し立てや通報や職権にもとづいて調査し、救済の必要を認めた場合、加害者に勧告などができるものです。
しかし、人権侵害とされる行為の定義は、抽象的な規定が多く、表現の自由や報道の自由にも抵触するおそれがつよいものです。人権侵害の申し立てをうけて調査する際、当事者が調査に協力しないと罰則が科せられるようになっています。一方、公権力の調査拒否は容易に認められるなど、公権力の人権侵害に対する救済はきわめて不十分です。また、救済推進委員会の審理は非公開で、申し立てられた人の弁明権も保障されておらず、その独立性も不十分です。
鳥取県弁護士会はこの条例の問題点を指摘し、重大な欠陥は覆いがたく、憲法違反のおそれがある、市民生活に悪影響を及ぼすもので、行政がつねに監視する暗い社会の布石になりかねないときびしく批判しています。
このように鳥取県の条例は、政府が02年に国会提出した人権擁護法案がもっていた、人権侵害規定のあいまいさ、公権力の人権侵害に対する救済が不十分であり、委員会の独立性が保障されていないなどの問題点と共通した欠陥をもっていることは明らかです。
条例は成立しましたが、県民や県弁護士会、マスコミなどからのきびしい批判がわきおこっており、条例の改廃もふくめ、徹底的な見直しが求められます。(光)
〔2005・11・5(土)〕