2005年11月14日(月)「しんぶん赤旗」
受けとる年金同じでも
どんどん負担重く
増税に医療改悪が追い打ち
「そんなに負担を引き上げようとしているんですか…。大きいなぁ」。政府の税制改悪にともなう医療費の自己負担増に加え、厚生労働省が「医療構造改革試案」に盛り込んだ負担増―。小泉内閣による連続的な高齢者の医療費自己負担増に、東京・北区の佐藤栄治さん(78)は不安の声をあげました。
■在宅酸素療法で生活 佐藤さん(78)
ときおり、「ゼーッ」と音をたてながら、ゆっくりと呼吸する佐藤さん。肺結核の後遺症で、左肺が機能していません。鼻にあてたチューブから酸素を吸う在宅酸素療法が生活を支えています。チューブは眠るときもはずせません。医療費の窓口負担は毎月約一万一千円です。
佐藤さんの年金収入は年二百四十万円ほど。これまでは住民税非課税だったので、通院の自己負担上限額は月八千円、入院も含む上限額は月二万四千六百円でした。上限を超えた分の払い戻しを受けると、佐藤さんの実質負担は毎月八千円です。
■住民税が課税に
しかし、来年度から佐藤さんには住民税が課税されることになりました。小泉内閣の税制改悪(公的年金等控除の縮小など)によって、住民税の課税最低限が変わるからです。現行は課税対象になる年金収入が二百六十六万円以下なら非課税ですが、来年度から単身で年金収入百五十五万円以下、配偶者を扶養している夫婦で年金収入二百十二万円以下に引き下げられます。
住民税課税になると、通院の自己負担上限額は月一万二千円、入院も含む上限額は月四万二百円となります。佐藤さんのように、実際の収入が変わらなくても、自己負担上限額は上がってしまうのです。
新しく住民税課税になる人の自己負担上限額が上がるのは来年八月からです。「これからは大変だね。入院なんかできないよ」と佐藤さん。
加えて、厚生労働省は「医療制度構造改革」で、来年十月に自己負担上限額の引き上げを計画しています。実施されれば、佐藤さんの入院も含む自己負担上限額は月四万四千四百円に上がります。
たった一年の間に、二度の負担増―。医療費のほかにも、住民税課税にともなって、国民健康保険料と介護保険料が上がります。東京都のシルバーパスも年千円から、年二万五百十円になります。
■酸素やめるしか
在宅酸素療法は電気代だけでも月二千百円かかります。ゆっくりとした口調で、佐藤さんは言いました。「負担が増え続けて、生活が苦しくなれば酸素をやめなければならない」。高齢者に負担を押し付ける政治――。
「収入が変わらないのに、どんどん負担が重くなるのでは、長生きするほど大変な思いをすることになる。こんなことを許してはいけない」
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