2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」

政府税調「廃止」無視できず

大企業減税

財界巻き返しに躍起


 政府税制調査会(首相の諮問機関、石弘光会長)は、今月末に小泉首相に提出する二〇〇六年度税制「改正」答申に大企業減税の一部廃止を盛り込む方針です。日本共産党が求めてきたもの。一方、財界は、継続や拡充を求めて巻き返しをはかろうとしており、攻防が続いています。


■「あれは効いた」

 「あれは効いた」というのは財界関係者。「あれ」とは、日本共産党の志位和夫委員長が九月三十日の衆院予算委員会で行った質問のことです。志位委員長は、小泉内閣が庶民には合計年間三兆五千億円もの大増税、大企業・大資産家には年間二兆二千億円もの大減税を決めてきたことをあげ、「抜本的に見直すべきだ」と小泉首相を追及。研究開発減税の恩恵を受けたトヨタ自動車など大企業六社から自民党は二億円近い献金を受けている(〇四年)ことを示し、「首相は『既得権益の打破』というが、最大・最悪の“既得権益”である財界権益にメスを入れないのでは、『改革』の名に値しない」と批判しました。

 なかでも焦点となったのは、研究開発減税の2%上乗せ分とIT(情報技術)投資促進減税の存廃問題でした。いずれも小泉内閣のもと、「景気対策」として〇三年度税制「改正」でスタートし、〇六年三月末までの三年間の時限措置でした。ところが、日本経団連(会長・奥田碩トヨタ自動車会長)は「引き続き整備・拡充することが不可欠である」(〇六年度税制「改正」に関する提言、九月二十日)と継続・拡充を求め、経済産業省も延長を要望していました。

■「1回やめよう」

 志位委員長の追及に、小泉首相は「経済効果をよく見極めて今後判断」(九月三十日、衆院予算委員会)としていましたが、政府税調は「(両減税措置は)期限切れになるんだから、これは一回やめましょうということ」(石会長、十一月十五日の記者会見)と期限どおりの廃止を答申に盛り込むことを打ち出しました。財務省も廃止を主張しています。

 廃止に傾いていることに「志位さんが、個別の企業名をあげて(研究開発減税について)質問した」ことも影響したと財界関係者。「もし、継続になったら、また『企業献金でそうなった』とやられるでしょう。巨大与党になったから、逆に、財務省はそういわれることを気にしている」といいます。

■新たな仕組み要求

 ただ、財界は「たとえ、研究開発減税の2%上乗せとIT減税は打ち切りになっても、なんらかの形で減税措置を残す」(日本経団連事務局幹部)と巻き返しに躍起です。

 日本経団連は〇六年に企業献金をするさいの政党評価の基準となる「優先政策事項」を発表(十一月八日)。「経済活力、国際競争力強化に向けた税・財政改革」の項目のなかで、「研究開発・設備投資の促進など企業活力の向上」という表現で大企業減税の継続・拡充や法人課税の引き下げを求めました。

 自民党税制調査会の柳沢伯夫会長は「(IT投資減税は)今のままの制度を延長するのは問題だ」とする一方、「産業の国際競争力を向上させたいという思いは強いので、本当に効果的な税制にすべきだ」(十一月九日、日本経済新聞のインタビュー)として新しい仕組みの減税措置を導入する姿勢を示しました。

 政府税調の石会長も両減税措置を期限どおりやめたうえで、「国際競争力という視点から、守備範囲を少し見直してもよい。新たなものを考えてくれということには、これから議論」(十一月十五日の記者会見)として、財界の要望に配慮する考えです。

■税の集め方見直せ

 「庶民に大増税、大企業には大減税」という路線の見直しこそが求められています。

 来年度税制「改正」で政府・与党は、一九九九年に景気対策として導入された三・三兆円規模の所得税・住民税の定率減税を全廃(所得税は〇七年一月、住民税は同六月実施)する一方、同年に実施した大企業減税(法人税減税)や金持ち減税(所得税の最高税率の引き下げ)は、そのまま継続させようとしています。低迷する家計にいっそうの負担を押し付け、空前の大もうけをする大企業は「金の卵」(小泉首相)だからと、応分の負担すら求めようとしません。

 バブル期以上の大もうけをしている大企業にゆきすぎた減税をしてきたため、法人税の税収(国税)はかつての約二十兆円から約十兆円に落ち込みました。その減収分の穴埋めを消費税の税収でしている関係になっています。なおも、法人課税の減税や社会保険料の企業負担軽減を求める財界は、その財源として消費税の増税を迫っており、庶民大増税に反対する世論との綱引きになっています。

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