2005年11月20日(日)「しんぶん赤旗」
靖国参拝
首相は「短期的問題」というが
戦後国際秩序の根本
小泉純一郎首相は十九日、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議後の記者会見で、自らの靖国神社参拝問題について、「短期的に一つの問題で意見の違いがあったとしても、中長期的に両国関係を悪化させない方向での努力をしていかなければならない」「お互い時間がたてば理解されうる」などとのべました。
首相の靖国参拝は、果たして「短期的に一つの問題」と受け流すことができる問題なのか。記者会見でイギリスのBBC放送の記者がただしたように、靖国神社の軍事博物館「遊就館」は、日本が起こした戦争を「アジア解放の戦争」「自存自衛の戦争」だとして正当化しています。
この神社を首相が参拝することは、「こうした戦争の解釈を信じているのか、この考えを推し進めている」(BBC記者)ものと受け取られて当然です。
戦後の国際秩序は、日本、ドイツ、イタリアがおこなった戦争が犯罪的な侵略戦争だという共通の認識に立っています。これを認めないということになれば、戦後の国際秩序への挑戦として見過ごすわけにはいかない政治問題になります。
まして、日本の侵略を受けた当事国である韓国、中国にとっては、日本がかつての戦争にどういう態度をとるかは、「短期的に一つの問題」どころか両国関係の根本問題です。
そのことを理解しようとしないばかりか、「お互い時間がたてば理解され得るもの」などと言い放つ首相。そこには歴史認識へのあまりの無理解と無恥が示されているだけです。しかも、首相は植民地支配の被害を受けた国で、侵略戦争と植民地支配にたいして、反省やおわびは一言ものべませんでした。代わりに自国の戦没者の「尊い犠牲」だけを言い募りました。宮沢首相以降の首相は少なくとも韓国で「反省とおわび」をのべてきました。その程度の見識さえない無神経さは驚くばかりです。
首相が強調する「相互依存関係、相互互恵関係」も、戦争のない平和な秩序を求めた国際関係を基礎としたものです。まず自らが戦後の国際社会の原点に真剣に目をむけることなしに、本当の「相互互恵関係」ははぐくめません。 (藤田健)