2005年11月23日(水)「しんぶん赤旗」
外国軍撤退を要求
イラク国民和解会議準備会合
民間人標的のテロ非難
【カイロ=小泉大介】カイロのアラブ連盟本部で開かれていた「イラク国民和解会議」準備会合は二十一日、外国軍撤退要求などを明記した最終声明を採択し、閉幕しました。同会合には、イラクのタラバニ大統領、ヤワル副大統領、ジャファリ首相をはじめ各宗教・宗派、民族の代表約百人が参加しました。
声明は、「イラク国民は外国軍がイラクから出て行くこと、イラク治安部隊を確立することにより、テロを取り除いて安全と安定のもとで生活することを求めている」「外国軍が日程に従って撤退することを要求する」と表明しました。
また、「イラクの民間人を標的にしたテロや暴力、誘拐を非難する」と強調すると同時に、「(占領軍に対する)抵抗は合法的な権利である」と明記。さらに「イラクのすべての構成員の立場を尊重する」「包括的な代表の参加を保障する」ことで、国民和解会議への抵抗諸組織の参加に道を開きました。
国民和解会議について声明は、来年二月の最終週か三月の最初の週に、イラクの首都バグダッドで開くことを確認。
最終声明採択後に記者会見したアラブ連盟のムーサ事務局長は、「参加者の意見の溝は七割まで埋められ、準備会合は成功した」と評価。ただ、「これは最初の一歩であり、困難や相違は残っている」と述べて、楽観論を戒めました。
■解説
■「占領こそ危機の源」
「イラク国民和解会議」準備会合が最終声明を採択したことは、イラクの国民和解に向けた「第一歩」(ムーサ・アラブ連盟事務局長)です。
十月に国民投票で承認されたイラク憲法が連邦制導入などを明記したことで、宗派、民族間の深刻な亀裂が表面化。「内戦の危機」(ムーサ事務局長)の懸念が高まる中、アラブ連盟の提唱で準備会合が実現しました。
外国軍撤退や武装抵抗勢力の会議参加問題では、準備会合初日にも、これに消極的な一部イスラム教シーア派、クルド人代表と、逆に強く要求するイスラム教スンニ派代表との間で対立が表面化。声明の採択を危ぶむ声も聞かれました。
しかし三日間の協議で一致した最終声明は、イスラム教スンニ派代表からも「準備段階だが良い一歩」(憲法起草委員を務めたムトラク氏)、「これを尊重する」(イスラム聖職者協会のダーリ事務局長)などの評価が出され、対話を通じた歩み寄りの可能性が示されました。
米軍はもとより、タラバニ大統領らイラク政府首脳も「外国軍が早期に撤退すれば悲劇的な結果をもたらす」と表明していました。それにもかかわらず声明が採択された背景には、国民の八割以上が外国軍駐留に強く反対(英国防省調査)している実態があります。会合に参加した移行政府のマリキ運輸相も「占領こそイラク危機の源だ」と語りました。
一方、今回の準備会合の成果が、来年の国民和解会議にどう結び付くかは予断を許しません。それは、なによりも米政権と米軍の出方にかかっています。
準備会合に参加したイラクの政治評論家、ワリード・アルズバイディ氏は次のように語ります。
「米軍のイラク撤退を求める声が米国内でもイラクでもこれだけ高まる中で、駐留を続けることがどんな結果をもたらすか。米軍は今回の声明から教訓を真剣に導くべきです」
(カイロ=小泉大介)