2005年11月23日(水)「しんぶん赤旗」
輸入農産物の関税は高い?
〈問い〉 日本では輸入農産物の関税が高いために消費者は高いものを買わされているという意見がありますが、どう考えたらいいのでしょうか。(東京・一読者)
〈答え〉 日本の農産物の関税率の平均は12%です。これは国際的にみて高いとはいえません。
輸出大国のアメリカ(6%)やカナダ(5%)に比べると高いものの、EU(20%)や輸出国のタイ(35%)、アルゼンチン(33%)より低く、スイス(51%)、ノルウェー(124%)などと比べるとかなり低い水準になっています。
だからこそ、外国産が洪水のように押し寄せ、世界最大の食料輸入国になっているのではないでしょうか。このような世界でも開かれた農産物市場は、歴代の政府が工業製品の輸出の見返りに食料の外国依存を進めてきた結果にほかなりません。
一方、わが国農業の基幹作物であるコメや地域の特産物(落花生やコンニャク)などごく一部には高関税が課せられ、国内への供給価格が“高く”なっているのもあります。しかし、そうした措置は国内産を低価格の外国産からまもるために欠かせないものです。
国内農産物の生産コストを下げる努力は当然必要ですが、コメなどの国内産価格と国際価格との格差は国土や経済条件の違いによるもので関係者の努力で克服できるものではありません。
それを無視して関税をなくしてしまえば、かつての麦や大豆と同じように主食のコメの生産も崩壊するのは必至でしょう。そのことで食料自給率はさらに低下し、国土や環境の荒廃が広がることになります。それは、消費者の85%が「食料自給率の大幅向上」を求めている(政府の調査)ことに逆行するのではないでしょうか。
「安全・安心な国産の食料を」という国民多数の願いの実現は、日本の国土・経済条件のもとで生産コストが償われることが不可欠です。そのために、農家にたいする政府の価格・所得保障によって消費者が“適正”な価格で購入できる条件を整えることは大事なことだと考えます。(橋)
〔2005・11・23(水)〕