2005年11月25日(金)「しんぶん赤旗」
耐震強度 民間の検査機関
ゼネコンやメーカーが出資
公正・中立性に疑問
偽造問題 出向社員受け入れも
マンションなどの耐震強度偽造が問題になっているなかで、自治体にかわって建築確認をおこなう民間の指定確認検査機関にゼネコンなど建設・住宅関連企業が出資していることが本紙の調べでわかりました。建設主と建築確認をチェックする側に共通の利害関係があれば審査の公正さに大きな疑問が生じます。「官から民へ」という路線でこうした検査制度をつくった政府の姿勢が問われます。
本紙が調査したのは、国指定の民間検査機関(四十九機関)のうち、株式会社の四十社。判明しただけで十一社が建設・住宅関連企業の出資を受けていました。(表参照)
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このなかには、ゼネコンやハウスメーカー、建材メーカー、マンション建設、設備機器販売に携わるガスや電力会社などが目立ちます。
このうち都市居住評価センターは、ゼネコンなど七十四社が参加する新都市ハウジング協会の会員企業などが出資して設立されました。
姉歯建築設計事務所の偽造を見抜けなかった東日本住宅評価センターは、東京ガスなどが出資。出資企業から数名の出向社員を受け入れていることも判明しました。
業界最大手の日本ERIは、ハウスメーカー五社の出資を受けており、出資企業の検査も請け負っています。同社は、建設関連企業からの出資は「5%以下」という独自の決まりをつくり、“ひもつき”との批判をさけようとしています。検査機関の社員は「実際にひもつきになっているような検査機関もある」と語ります。
日本共産党は、建築確認の事務を民間開放した一九九八年の建築基準法「改正」当時から、民間検査機関の公正・中立性に問題が出てくることを指摘していました。しかし、建設省(当時)は「改正」建築基準法施行直前に通達を出し、建設関連企業による民間検査機関の株式保有は、最大三分の二未満まで認めました。
この点では、専門家からも批判の声がでており、都内の一級建築士・新井啓一さんは「建築関連業種からの出資が三分の二未満まで認められるなど、民間確認検査機関に中立性が担保されない構造になっていることは重大な問題」と指摘。「第三者の目で公平におこなわれるべき検査が出資企業の意向に左右されてしまう危険がある。検査機関の公正性・中立性を保証する仕組みが必要だ」と話しています。
▼指定確認検査機関 国などの指定を受けて、建築物が建築基準法に適合するかを検査する民間機関。財団法人、株式会社、有限会社などがあります。二〇〇四年度の建築確認件数は、行政の約三十三万件に対し、民間は四十二万件となっています。