2005年11月27日(日)「しんぶん赤旗」
主張
外相「遊就館」発言
「靖国史観」の奨励でしかない
麻生外相は、靖国神社の戦争博物館「遊就館」は戦争の「事実を述べているにすぎない」(二十一日)と発言して、アジア諸国の反発をかっています。
日本が行った侵略戦争は正しかったという「靖国史観」を、「事実を述べているだけ」というのは、事実上、それを奨励するものです。政府の公式見解とも異なり、国際的に日本を孤立させる重大発言です。
■歴史歪曲のねらい
「遊就館」の展示内容を紹介する『遊就館図録』で、靖国神社宮司は、(1)「英霊顕彰」(2)「近代史の真実を明らかにする」が、遊就館の「使命」だとのべています。
「英霊顕彰」とは、「追悼」ではありません。戦死者を神としてあがめ、立派なことをしたとほめたたえることです。これは、日本が行った戦争を「聖戦」とする考え方を前提にしています。だからこそ、侵略戦争として断罪されたり、戦争指導者が戦犯として処罰されたのは間違いだという立場にたち、日本の戦争の正当性を主張しています。それが靖国神社・遊就館の「近代史の真実を明らかにする」ということの中身です。
たとえば、一九三七年からの中国への全面侵略戦争について、「中国正規軍による日本軍への不法攻撃」があり、「日中和平を拒否する中国側の意志があった」と、戦争の責任がすべて中国側にあるかのようにのべています。
太平洋戦争の開戦も、日本は「日米開戦を避けるべく…日米交渉に最大の努力を尽」くしたが、アメリカのルーズベルト大統領は、石油などの資源の対日輸出を禁止して、日本に「開戦を強要」したと描いています。靖国神社の後援でつくり、遊就館で上映しているドキュメント映画では、「日本に最初の一発を撃たせる」ためのアメリカの策謀と説明しています。戦争中の天皇制政府とまったく同じ「自存自衛の戦争」というためです。
しかし、このような侵略戦争正当化は通用するものではありません。
日本共産党の志位委員長が、「靖国史観」の実態を示して質問したのにたいし、小泉首相は、靖国神社の「考え方」は「政府と同じものではない」、「日本は戦争を起こしたんですから、戦争責任は日本にある」(六月二日衆院予算委員会)と答えています。そういいながら靖国神社を参拝しつづけているのは許しがたいことですが、外相発言はこの首相見解とも違っています。
麻生外相は、日本共産党の緒方靖夫議員の質問(二十四日参院拉致特別委員会)にたいして、遊就館の展示をみて戦争美化と感じるのは「見解の相違」だと開き直り、「靖国史観」について、「一宗教法人の見解をどうのこうのという立場に政府はない」ともいいました。一方で、「事実を述べているにすぎない」と評価し、奨励しながら、歴史的事実と小泉首相答弁を示されると、「どうのこうのいう立場ではない」というのはまったく矛盾しています。
■アジアの一員として
アジア諸国は、政治的経済的連携を強め、平和に向けた動きを加速しています。日本はアジアの一員として、この流れに合流し、アジア諸国との友好関係を強化すべきです。アメリカのブッシュ政権でさえ、「力の政策」を基本としながらもアジア外交を展開しています。
日本外交に急務なのは、侵略戦争を正当化する異常な政治から脱却し、大本から転換をはかることです。