2005年11月29日(火)「しんぶん赤旗」
「イーホームズ」が検査の葬祭場
住民運動で“待った”
違法発覚 建築確認取り消し
東京・品川
マンションなどの耐震強度を見逃して建築確認済証を出した民間の指定確認検査機関「イーホームズ」(東京・新宿区)が、避難路などに問題のある建物にも建築確認を下ろし、今年十月に東京・品川区から建築確認を取り消されていたことが分かりました。民間の検査機関が下ろした建築確認済証を地方自治体が取り消した例は少なく、注目されます。
この建物は、東京・品川区の東急大井町線「中延駅」隣に計画された「さくら相互」(本社・大阪市)の葬祭場。今回の耐震偽造設計で建築確認を下ろした「イーホームズ」がこの葬祭場も建築確認を下ろしていました。
住民団体「中延の環境を考える会」代表の一人、竹林禮介さん(62)は、「イーホームズは計画に問題があったのに見逃した。品川区には葬祭場の設置に関する環境指導要綱があるが、無視して建築確認を下ろした」と批判します。
住民らは昨年十二月に葬祭場ができることを知り、住環境の悪化を心配しました。建築主に説明会の開催などを求めて話し合っていました。「一度確認が下りたら建築を強行でき、建物ができてしまったら取り壊すことも不可能になる」と竹林さん。
住民は四千筆以上の請願署名を提出、採択されました。設計図面を入手して法令違反はないか調べてみるといくつかの不適格なところを発見。住民が建築審査会に審査請求をしたこともあり、品川区も設計図面に違反はないか慎重に調査を始めました。
その結果、火災発生のさいに必要な避難路の確保など三カ所の不適格な設計が見つかりました。区は、今年十月に建築基準法違反で、イーホームズが認めた建築確認を取り消しました。これは同区では初めてのことです。
竹林さんは「建築確認を民間にゆだねた結果の一番悪い現象が現れた」といいます。「避難路の確保というのは命の確保。ところがイーホームズは、軽微な問題としか認識していない。住民の命を守る目線で建築基準法をみない」と批判します。
「街づくりの視点がない」というのは「考える会」事務局の成澤正幸さん(58)です。「土地や建物は社会資産です。検査機関には安全で安心して住むことができる住環境を守る役割がある。建築基準法の精神はそこにあり、民間の検査にゆだねてしまうのではなく、行政が責任を持たなければいけない」
■行政チェックを
住民とともに運動してきた日本共産党の鈴木ひろ子品川区議の話 一度おりた建築確認が取り消しになったのは住民運動の大きな成果です。現在、品川区では約七割が民間機関で建築確認がされています。運動がなかったならば、違法があってもチェックできませんでした。行政が検査チェックする仕組みに改め、住み良い街をつくっていきたい。