2005年11月30日(水)「しんぶん赤旗」

生活保護 国負担削らず

政府・与党 義務教育費は1/3に減


 政府・与党は二十九日、国・地方税財政の「三位一体改革」で焦点となっていた生活保護費の国負担引き下げを見送ることを決めました。安倍晋三官房長官が、関係閣僚と与党政策責任者の会合で提案しました。地方側の「単なる負担転嫁」とする強い反対を受けたものです。代わりに、児童扶養手当や児童手当の国負担率引き下げなどで計五千二百九十二億円を削減する方針です。地方が求めていた施設整備費も半額分を税源移譲対象に含めます。

 政府は、「三位一体改革」として四兆円の国庫補助負担金の削減と、国から地方への三兆円規模の税源移譲を目標にかかげ、二〇〇六年度は積み残していた六千億円規模の補助金削減内容を詰めていました。首相官邸から六千億円のうち八割の削減目標を割り当てられた厚生労働省は、最終的に生活保護費のうちの住宅扶助部分を一般財源化するなどの案(三千八百億円削減)を提示。厚労省は地方との協議を一方的に打ち切り、政治判断に決着が委ねられていました。

 〇六年度の削減分とは別に、暫定措置扱いとされている義務教育費国庫負担金の減額(八千五百億円)をめぐっては、地方側が中学校分の一般財源化を求めていましたが、安倍長官は、小中学校を通じて負担率を現行の二分の一から三分の一に引き下げる案を提案。小坂憲次文部科学相はこれに従う意向を示しました。

 政府・与党は三十日に正式合意する一方、国と地方の協議の場を開き、決着内容を地方に伝えることにしています。


■水準確保の責任放棄

■義務教育の国庫負担削減

■解説

「三位一体改革」にもりこまれた義務教育費国庫負担金の削減は、小泉内閣の「小さな政府」路線につながるものです。政府は国庫負担金の削減に加えて、全体の教員数を減らすという二段方式で教育予算を大きく削減することをねらっています。

 国家公務員の削減目標を決めた経済財政諮問会議(十四日)は、地方公務員の純減目標のなかで教職員の削減を強調。「特に人員の多い教職員については、児童・生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保するよう検討する」としています。

 財務省の財政制度等審議会部会は、さらに「義務教育職員の給与水準を見直し」することを求め、給与引き下げの圧力を強めています。国庫負担金の削減は、こうした教員減らしの動きを加速させることにつながります。

 今回の決定は国庫負担金堅持をもとめた中央教育審議会答申をほごにするものであり、全国の教育水準を確保する国の責任を放棄するものです。

 地方に税源を移譲するから大丈夫という主張も、実際には四十道府県で財源が不足することが明らかになっており、根拠がありません。中教審委員の梶田叡一兵庫教育大学長は「大半の貧しい自治体と一握りの豊かな自治体の間で教育水準に大きな格差が生じかねない」(「毎日」十月二十四日付)と述べています。

 文部科学省は、補助率を三分の一へ減らすことを認めるかわりに、それ以上の削減には反対すると態度を変えましたが、一歩後退はさらなる後退につながる危険があります。(北村隆志)


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