2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」
義務教育費国庫負担金
削減めぐり 地方・文科省対立
引き続き「三位一体改革」の焦点
小中学校の教職員給与の一部を国が負担する義務教育費国庫負担金について、十一月三十日に政府・与党が合意した補助率の削減では不満だとして、全国知事会など地方六団体からは制度の廃止を求める声が続いています。文科省はいっそうの削減は拒否する姿勢を示しており、政府がもくろむ第二期「三位一体改革」のなかで引き続き焦点になりそうです。
義務教育費国庫負担金についてこれまで地方側は、廃止にむけた第一段階として中学校分の八千五百億円を削減して地方に税源移譲するように求めてきました。
しかし、国庫負担金の存廃について論議した中央教育審議会(文科相の諮問機関)は、十月に「二分の一の国庫負担」の堅持を求める答申を提出。採択では少数派の地方代表委員が強硬に反対するため、異例の多数決で決定しました。
地方側と文科省が真っ向からぶつかるなかで、三十日の政府・与党合意では八千五百億円の削減は認めるものの、中学校分の廃止ではなく、国庫負担の補助率を現在の二分の一から三分の一に減らし、制度は残すことで妥協を図りました。
地方側はこの合意を受け入れましたが、全国町村会の山本文男会長(福岡県添田町長)が「負担率引き下げでは地方分権はすすまない」と述べるなど、不満を示しています。負担率の引き下げでは今後の制度廃止を望めないためです。
一日、全国知事会の麻生渡会長(福岡県知事)は「一般財源化が必要との考え方が変わるものではない」と述べ、地方六団体として引き続き廃止を求めていく方針を表明しました。
一方、小坂憲次文科相は国庫負担金の三分の一への削減について「恒久的な意味合いを持つ」と、いっそうの削減には反対の姿勢を明らかにしています。
「三位一体改革」について、小泉純一郎首相は先に開かれた全国知事会で「これで終わりではない」と述べ、継続の意向を示しました。安倍晋三官房長官は一日、「しっかりと交付税の改革、適正化を行っていかないといけない」と、残された地方交付税の削減にも踏み込む構えです。地方交付税の削減による教育・福祉へのしわ寄せが懸念されます。
教育に対する国の責任を果たす国庫負担金は削減で大きく後退しましたが、さらに完全な廃止を許すのかどうか。引き続き地方・政府の動きに注意が必要です。