2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」
石綿新法案 低い支給額
“労災並み補償”に遠く
政府が十一月二十九日決めた石綿(アスベスト)被害者救済の新法案大綱で、患者や遺族が求めていた「労災並みの補償」には遠く及ばない支給額が明らかになり、不満と失望の声があがっています。
石綿関連工場の周辺住民や従業員の家族など労災の対象外の人が中皮腫や肺がんで死亡した場合、遺族に「特別遺族弔慰金」二百六十万―二百八十万円が支給されることになります。
しかし、労災なら、仮に年収三百六十万円の労働者(給付基礎日額一万円)が死亡した場合、遺族(六十歳以上)には百五十三万円の年金が補償されます。このほかに一時金として「特別支給金」三百万円が出ます。
六十歳以下で受給資格のない遺族には、「遺族補償一時金」が支給され、日額が一万円なら千日分、一千万円になります。
新法の補償の低さについて、環境省の担当者は「労災の場合は保険料を払っている労働者を対象としたもので、新法の場合とは性格に違いがある」と説明しています。
しかし、石綿関連の裁判についてみれば、原因企業が敗訴の場合、遺族に対し五千万円以上の支払いになります。中皮腫で死亡した関西の労働者の遺族が起こした裁判では、会社の安全配慮義務違反があるとされ、原告の妻と子どもら三人にそれぞれ千八百九十八万円の支払いが命じられています。東京地裁では五千七百万円の支払いを命じた判例もあります。
石綿被害を拡大した国の責任の重さや、特定の疾病で働けなくなった労働者に最低限の生活補償を定めた労災、判例に比して、新法の遺族弔慰金や療養手当(約十万円)はあまりに低額です。
環境省は「労災との格差に不満があれば、裁判でということもある。新法ができたからといって裁判に訴えるのを妨げることはない」とのべています。
■運動広げることが大事
日本共産党の吉井英勝衆院議員の話 政府・与党は、低い水準の補償額でも新法をつくればアスベストの運動も沈静化するだろうと考え、決着を図ってくると思います。しかし、被害者が安心して暮らせる補償とはかけ離れたものですので、法律ができたからといってあきらめずに運動を広げることがますます大事になります。