2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」
世界の軍事同盟網は今どうなっている?
〈問い〉 第二次大戦後、アメリカは世界中に軍事同盟網をはりめぐらしたと思いますが、これらはいま、どうなっているのですか?(東京・一読者)
〈答え〉 第2次世界大戦後、アメリカは、アフリカを除くほぼ全大陸に軍事同盟網をはりめぐらしました。米州相互援助条約(リオ条約―米国と中南米22カ国)、北大西洋条約機構(NATO―米・カナダと欧州24カ国)、日米安保条約、アンザス条約(ANZUS―米・豪・ニュージーランド)、米・フィリピン相互防衛条約、米・韓相互防衛援助条約、東南アジア条約機構(SEATO―オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、タイ、英国、米国)、中央条約機構(CENTO―イギリス、イラン、イラク、トルコ、パキスタン、米国は58年にオブザーバー参加し実質的に機構を主導)がそれです。
ベトナム侵略戦争の足場ともなったSEATOは、ベトナム戦争終結後の77年に機構としては解体。かつてタイに5万人駐留した米兵は76年に完全撤退しました。フィリピンも民主化の前進のなかで92年に米軍基地を全面撤去させました。
その結果、いまアジアでは米軍は日本と韓国だけに集中。その韓国でも、粘り強い米軍基地反対運動を背景に、米軍基地の大幅縮小がすすもうとしています。
中東地域を中心とするCENTOは、王政を打倒したイラクが59年に脱退、79年にはイランでイスラム革命がおこって脱退国があいつぎ、機構は解体しました。
ANZUS条約は、ニュージーランドがアメリカの核持ち込みを認めない非核政策をとるようになり、米国が防衛上の義務を打ち切った86年以降、機能を停止しています。
リオ条約は「米州の一カ国にたいするいかなる国による武力攻撃も、米州のすべての国に対する攻撃とみなす」という共同防衛条項をもち、アメリカが中南米を「裏庭」として確保するための軍事同盟でした。しかし、メキシコが昨年、正式脱退したほか、米州のほぼすべての国が参加する米州機構で、米州の安全保障問題は米国の専権事項ではないことが確認され、アメリカ離れがすすんでいます。
NATOでは、イラク戦争をめぐってフランス、ドイツ、カナダ、ベルギーなど一連の主要国が強く反対し、分裂状態となりました。欧州側の加盟国と大部分が重なる欧州連合が、国連中心主義と多国間主義を打ち出した安全保障戦略を採択する(03年12月)など、アメリカの単独行動主義には一線を画すようになっています
(良)
〔2005・12・10(土)〕