2005年12月14日(水)「しんぶん赤旗」
イラク 国民議会選あす投票
多国籍軍撤退が焦点
主権回復に結びつくか
【カイロ=小泉大介】事実上の米軍占領下にあるイラクで十五日、国民議会(国会)選挙の投票が行われます。十月の国民投票で憲法が基本的に承認されたのを受けたものです。今年一月末の暫定国民議会選挙と異なり、任期四年の正式な国民議会(定数二百七十五)を選出します。この議会が年内を期限に正式政府を樹立する任務を持ちます。選挙はイラクの主権回復に結び付くかどうかにかかわる重要な意義をもっています。
選挙には約二十の政党・組織連合が立候補。有力なのは、イスラム教シーア派の「統一イラク同盟」、クルド人の「クルド同盟」、アラウィ前首相率いる世俗派の「イラク国民リスト」。米軍の軍事攻撃に抗議し大半が暫定国民議会選挙を棄権したイスラム教スンニ派からも二つの政治勢力が参加しています。
選挙戦では各勢力とも国家統一や外国軍駐留の終了を訴えていますが、実際にはこれに反する発言や動きが出ています。
■独立国家に
シーア派のイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)指導者のハキム師は十一月末、「選挙後には、中央と南部における地域政府樹立を達成しなければならない」と言明。北部クルド人地域ではこの間、自治政府が中央政府の承認なしに欧州企業との間で石油採掘契約を結び、スンニ派から「まるで独立国家の振る舞いだ」との批判を浴びています。
先の憲法国民投票では草案に明記された連邦制をめぐり、これに賛成のシーア派、クルド人と、「国家分裂をもたらす」と反対したスンニ派との間で深刻な対立が浮き彫りになりました。今回の選挙でも、公約とは裏腹に、各宗派、民族が独自の利益追求に走り、さらに対立を深める可能性もあります。
選挙後の正式政府樹立にあたっても、各政治勢力の確執が予想され、期限である年内の樹立は困難だとする見方もあります。移行政府幹部からは「来年一月末までに発足できればいい」(ゼバリ外相)という声が早くも出ています。
■「米軍の撤退」
国民議会選挙をめぐる最大の問題は、依然として占領を継続する米政権の姿勢です。ブッシュ米大統領は九日、「米軍撤退の明確な日程を求める人々がいるが、それは敵を励まし、イラクをさらに混乱させる」と演説。撤退の意思のないことを改めて示しました。
スンニ派有力組織のイスラム聖職者協会は、米軍の軍事作戦が現在も各地で続いていることなどをあげ、「占領下ではいかなる政治プロセスにも参加しない」と強調。国民議会選挙への不参加を表明しています。
ロイター通信が実施し四日に伝えたイラク国民百三十一人の意識調査では、新議会が取り組むべき第一義的課題はとの問いへの回答は、多国籍軍撤退が五十九人、治安改善が四十九人、人権確立が十一人、雇用創出が七人、その他五人でした。この調査はスンニ派が多数の地域を含んでいません。同通信は「多くの有権者が米軍が出て行くことを求めている」と指摘しました。