2005年12月16日(金)「しんぶん赤旗」
誤情報でイラク開戦
米大統領が認める
大量破壊兵器の保有なし
【ワシントン=山崎伸治】ブッシュ米大統領は十四日、ワシントン市内で演説し、イラクの大量破壊兵器にかんする情報機関の分析は誤っていたとのべるとともに、これに基づいて開戦を決断した自らの責任を明確に認めました。
■戦争は正当化
大統領は、イラクが戦争前に大量破壊兵器を保有していたという情報について「多くが誤りだったことが判明した。大統領として、イラク攻撃を決定した責任は私にある」と言明しました。
イラクの大量破壊兵器にかんする情報が誤りであったことは大統領が任命した独立調査委員会がすでに最終結論をだしています。この情報をもとに国連安保理に開戦を促したパウエル国務長官(当時)も「人生の汚点だった」と誤りを認めましたが、大統領が公式に情報の誤りを認め、開戦責任に言及したのは初めて。根拠のない情報で世界を欺き、戦争に巻き込んだ責任の重大性が改めて明らかになりました。追随して侵略戦争に加担している小泉政権の責任も問われることになります。
大統領がイラクについて演説するのは四回目。戦争を支持した「有志」連合諸国が、イラク情勢の泥沼化で相次いで撤退を表明。米軍の撤退を求める声も高まるなか、大統領は開戦責任と戦争継続の理由を説明する必要に迫られていました。
大統領は演説で、うその情報に基づいたことをみとめながら、「サダム・フセイン(元イラク大統領)を追い払うという私の決断は正しかった」と戦争を正当化。「9・11同時テロの結果、私はサダム・フセインのような脅威に対する見方を変えた」と同時多発テロとイラクとを直結させながら、先制攻撃の必要性を強調しました。さらにフセイン追放に反対した国の情報機関でさえ誤った情報を共有していたと弁明しました。
その上でイラク撤退の「予定表」を示すことは、誤ったメッセージを送ることになると強調して、撤退の見通しをのべることを拒否しました。
しかし大義のない戦争の責任を部分的にも認めたことは、戦争をめぐって分裂した国内、国際世論に大きな影響を与えることが予想されます。