2005年12月17日(土)「しんぶん赤旗」

主張

イラク侵略戦争

3万人も殺して「正当」とは


 ブッシュ米大統領が、イラクの大量破壊兵器保有という「情報は誤りだったことが判明した」といいつつ、「サダム・フセインを除去するという私の決定は正しかった」とイラク侵略戦争を正当化する演説をしました(十四日)。イラク人の死者が三万人にもなることも、はじめて認めています(十二日)。米兵の死者も二千百人以上になっています。

 これだけの人の命を奪う戦争の根拠が「誤り」だったのに、どうして「正しい」などといえるのでしょう。“気にいらない政権はとにかくやっつける”ということでしかなく、まさに“ならず者”の言葉です。

■査察打ち切って開戦

 イラク戦争開戦にあたり、ブッシュ大統領は、イラクのフセイン政権が「大量殺人兵器で平和を脅かす無法な政権」(二〇〇三年三月十九日)だといって、攻撃を正当化しました。

 しかし、その当時から、アメリカの一方的な主張は、国際社会で認められるものではありませんでした。国連がイラクにたいして大量破壊兵器の有無を調べる査察をおこなっている最中であり、あと数カ月で結論を出せるところにきていたからです。査察の結論が出るのを待つべきであったのに、査察を打ち切らせ、強引に戦争に踏み切ったのが、ブッシュ政権です。

 一国がある国を一方的に「脅威」だとみなして先制攻撃の戦争を仕掛けることは、国連憲章がもっとも厳しく禁止している侵略行為です。「平和に対する脅威」にたいして措置をとることができるのは、国連安保理だけです(憲章第三九条)。

 ブッシュ政権は、イギリス、スペインを引き込んで、イラクへの軍事攻撃を根拠づけるための安保理決議を通そうとしましたが、認められませんでした。アメリカによるイラク軍事攻撃に“お墨付き”を与える国連決議は存在しません。

 ブッシュ大統領は“テロとの戦い”を強調することで、イラク戦争の正当化をはかっていますが、フセイン政権が9・11テロに関与していた証拠もありません。

 ウソの口実で侵略戦争を開始したブッシュ大統領の戦争責任が厳しく問われます。

 米議会からも、「今日の情報にもとづけば、議会が、大統領にイラクに対する武力行使の権限を与えるよう要請されることはなかっただろう」(クリントン上院議員)との声が出ています。事実にもとづけば、大統領に「武力行使の権限」を与えたことも間違いだったということになるはずです。

■平和秩序破壊の共犯

 小泉首相は今回のブッシュ演説に関して、「日本は国連決議に沿って判断した。イラクが大量破壊兵器がないことを証明すれば、戦争は起こらなかった」と語りました。

 しかし、「国連決議」を持ち出しても、イラク侵略戦争を正当化することはできません。小泉首相が開戦時にもっとも強調したのは、「問題は、大量破壊兵器を保有するイラクの脅威に私たちがどう対峙(たいじ)するか」だということでした。何を根拠に、「大量破壊兵器の保有」を断定したのでしょう。ブッシュ大統領の言い分をうのみにしただけのことです。ブッシュ大統領が「誤り」を認めた以上、首相のイラク戦争正当化論も根本から崩れています。

 無法な戦争を支持して国際平和秩序の破壊に手を貸した責任はきわめて重大です。


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