2005年12月20日(火)「しんぶん赤旗」
“私の決定が恐るべき 損失をもたらした”
イラク戦争批判に釈明
米大統領
【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ米大統領は十八日夜、イラク政策についてテレビ演説し、イラク戦争・占領への国民の批判の高まりに対し一定の釈明をしました。イラク駐留米軍の一部削減の可能性に言及したものの、全面撤退論は拒否しました。
二〇〇三年三月のイラク開戦以来初となる大統領執務室からの演説でブッシュ氏は、イラク戦争の大義としたイラクの大量破壊兵器保有についての「情報の大半は間違いだと判明した」と述べつつ、「大統領としてイラク開戦の決定に責任があるが、フセイン政権打倒は正しかった」との自説を繰り返しました。
また「私の決定のいくつかが恐るべき損失をもたらしたことを知っている」とも述べました。
同氏は十五日のイラク国民議会選挙が「暴力の終えんを意味しない」と言明。イラク情勢は「予期していた以上に困難だ」との認識を示しました。しかしイラクから米軍は撤退すべきだとの主張に関しては、「戦争は困難だが、われわれが敗北しているわけではない」と発言。イラクを「中東の自由の模範」にする目標の実現のため「連合軍は攻撃態勢を維持する」とし、撤退論を退けました。
ブッシュ大統領は国民に対し、「この厳しく崇高で必要な大義のために忍耐を求める」とも表明。イラク戦争反対の世論に対しては、「その思いの強さは理解する」としつつ、イラクでの戦争継続が「米国民の安全保障に不可欠だ」と強調しました。
■解説
■懸念解消に躍起
今回のテレビ演説は、イラク戦争・占領正当化の演説を二週間で四回行った後で、日曜夜のゴールデンタイムにさらに行う異例のものでした。演説は「イラクと国内という失った二つの地盤を取り返そうとする今週末のクライマックス」―ニューヨーク・タイムズ十九日付電子版は評しました。
その背景には、イラク戦争に対する国民の懸念の広がりがあります。さらに、大統領が許可して国家安全保障局(NSA)が盗聴をしているとの十五日付同紙の暴露の波紋もあります。
ブッシュ氏は「この戦争に賛否両論があるのは承知している」と言わざるをえず、一定の自己検討的な発言もしました。
演説では、イラク戦争反対の国民に対しても、「異議を伺い、その思いの強さは理解する」と表明。「私のなすことのすべてを支持することは期待しないが、今夜は要望がある。絶望に屈せず、自由のためのこのたたかいを投げ出すな」と支持を訴えました。(ワシントン=鎌塚由美)