2005年12月20日(火)「しんぶん赤旗」
社会リポート
郵政公社 手数料値上げ
4月から窓口振替・国際送金料金
民営化を先取り?
「料金改定の知らせが来てびっくりした。黒字なのに値上げするのは許せない。民営化に向けた動きではないか」―。日本郵政公社が来年四月実施を予定している郵便振替料金と国際送金料金の改定では、郵便局の払込手数料が七十円から百円になるなど、利用者から驚きと怒りの声があがっています。(伊藤悠希)
日本郵政公社は来年四月三日から郵便振替料金と国際送金料金の改定を実施することを十一月十六日、発表しました。郵便振替料金の改定は窓口利用の手数料を引き上げ、ATM、インターネット利用手数料を値下げするというものです。(表参照)
通常払い込み(通信販売の代金等を郵便振替口座に送金)
取扱金額等 窓口 ATM
旧 新 旧 新
〜1万円 70 100 60 60
〜10万円 120 150 110 110
〜100万円 220 250 210 210
改定額 +30 据え置き
窓口での「通常払い込み」が三十円値上がり、百円(取扱金額が一万円以下)になります。取り扱いの種別によっては窓口取り扱いでも据え置きのものもありますが、値下げはありません。パソコン・携帯電話を利用する場合は据え置き、または値下げになります。
一方、国際送金料金は送金金額によって細分化されていたものを一律二千五百円に。「国際郵便振替(口座間)」の通常振替の場合、四百円から六倍以上の二千五百円になります。
■銀行と比べて
一連の料金改定について、東京・新宿区の新宿郵便局で利用者に聞いてみると、ほとんどの利用者が「来年四月に料金改定があることを知らなかった」と答えました。そのほか、「料金改定の理由がそれなりのものでないと納得できない」(男性)、「国際送金の値上げは何かの間違いじゃないか。自分が利用するなら考える」(女性)など。二〇〇七年十月に移行する郵政民営化を先取りした値上げへの不満がこもごも出されました。
実際、「日本郵政」(郵政民営化で発足する持ち株会社)の経営トップに就任する西川善文・三井住友銀行前頭取は、民営化後の郵政事業について「競争力のあるビジネスモデル」、「リスクを取る」経営を目指すと述べ、利潤追求の姿勢をあからさまにしています。
郵政貯金事業本部の広報部は「値上げ幅が激しいものもあるが銀行と比べるとまだ安い。もともと安すぎた面がある。利用者にとってはただが一番よいだろうが、それでは経済が成り立たない。手数料収益の割合は全体の収益の割合からみると少ない。民営化とは関係ない」といいます。
料金改定後、窓口を利用すると、取扱金額にかかわらずATMより四十円高くなるため、郵政公社では、ATMの利用をすすめています。
しかし、すべてのATMに払込機能が付いているわけではありません。払込機能付きATMが配備されていない郵便局もあります。しかも、すべての利用者がATM利用に慣れているとは限りません。
「窓口の混雑を緩和するため、ATMやパソコン、携帯電話を利用してもらいたい」と広報部はいいますが、窓口業務の人員を減らし、金融商品の販売や投資信託などの事業に人員を配分しなおそうというねらいがうかがえます。
■利用者に負担
「今回の料金改定は窓口料金を上げ、ATM料金を下げることで利用者をATM利用に誘導させ、手数料がおもな収益となっている銀行と同じようにしていくのではないか」というのは、郵政産業労働組合(郵産労)中央本部の砂山洋一副委員長です。「郵政公社は本来、国民のために機能しなければならないのに、民営化が決まり、事業の質をもうけのためへと移行していく構造が見える。このことは利用者に負担を押しつける結果となっています」