2005年12月21日(水)「しんぶん赤旗」
偽装の責任どこに
安全犠牲 コスト削減
総研が“経営指導”
マンションやホテルの耐震強度偽装問題は、発覚から一カ月余の二十日、ついに刑事事件に発展しました。偽装の責任はどこにあるのか、疑惑の構造はどこまで解明されたのか。改めて焦点をみると…。
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姉歯秀次元一級建築士の耐震強度偽装件数はこれまで判明しただけで七十八件に及んでいます。
姉歯氏は国会で一連の偽装を認めるとともに、動機について、施工を請け負った木村建設の篠塚明元東京支店長から「コスト削減のため鉄筋を減らすよう圧力をかけられた」と証言。一方、名指しされた篠塚元支店長は「減らせとはいったが、法律の範囲内の話」と“反論”しています。
偽装の真相解明がひとつの焦点です。
■疑惑の「構図」
偽装の背景がコストを極限まで切り詰め建設費を削減する路線です。木村建設を三十年にわたってコストカットで“経営指導”していたのがコンサルタント会社「総合経営研究所」(総研)でした。
木村建設の木村盛好社長は姉歯氏を下請けとして使った平成設計が「総研の指示で動いていた」と証言。総研幹部が、平成設計担当者に鉄筋やくいを減らすよう求めたメモも明らかになっています。総研の責任解明も重要です。
「姉歯物件」を十八棟販売していた建築主「ヒューザー」に問われているのは「瑕疵(かし)担保責任」。欠陥住宅を売りつけた責任です。欠陥を知りながら販売していれば詐欺の疑いも出てきます。
構造計算という安全の基礎にかかわる部分で「コスト削減」をキーワードとした疑惑の構図。その解明こそ求められています。
■能力問われる
姉歯物件の大半を“検査”しながら、偽装を見抜けなかったのが民間検査機関でした。
民間に建築確認・検査を開放したのは一九九八年の建築基準法の改悪でした。民間検査機関は、九九年には二十一機関にすぎなかったものが二〇〇四年には百二十二機関に急増。取り扱う建築確認の件数も行政を逆転し、今では四十二万件にも及んでいます。
その“売り”となったのがスピード審査。行政がこれまで果たしていた住民との調停・調整機能もまったくなくなってしまいました。
姉歯氏は「構造のプロであればすぐ偽装はわかると思った」「イー社は図面を見ていないのではないか」などと証言。検査機関の役割そのものが問われています。
■米・財界の圧力
コスト削減と民間開放――この二つを可能にしたのが自民党政治がすすめた九八年の建築基準法の改悪でした。当時、反対したのは日本共産党だけでした。
その背景には、工法や資材の規制緩和、建築確認・検査のスピードアップで圧力をかけた米国政府や、日本のゼネコン、ハウスメーカー、財界の要求がありました。政府はこうした圧力を背景に、建築基準法を改悪。耐震偽装の下地を作り出してきました。
■献金と口利き
業界と政治との癒着も浮かび上がりました。
国土庁長官も務めた自民党の伊藤公介衆院議員は、偽装問題を国土交通省が公表する直前、同省幹部に「友人が困っている」と電話。「ヒューザー」の小嶋社長を紹介し、交渉の席には「姉歯物件」の建築主になっている「東日本住宅」の桃野直樹社長も同席したことが判明しています。
自民党の政治家らに献金したのはヒューザーだけでなく、木村建設、民間検査機関の日本ERIやイーホームズも名前を出しています。こうした疑惑の構造にこそメスを入れることが求められています。