2005年12月24日(土)「しんぶん赤旗」

政府・与党

消費税率アップ時期めぐり発言

増税を既定事実化

選挙での審判回避も狙う


 消費税増税法案の国会提出や実施の時期をめぐって政府・与党幹部から「二〇〇七年度は難しい」という発言が相次いでいます。「全体の財政状況、歳出削減の進み具合をみて」(小泉純一郎首相)というのが表向きの理由ですが、消費税増税を既定事実にし、本格的な庶民大増税のレールを敷こうという思惑があります。


 政府が二十四日に閣議決定する〇六年度政府予算案には、サラリーマンが払う所得税・住民税の定率減税全廃(〇七年)が盛り込まれています。全廃による年間の国民負担増は三・三兆円。与党は「サラリーマン増税は行わない」という自らの総選挙公約を平然と投げ捨て、庶民増税を強行しようとしています。

 その最中の消費税増税をめぐる発言です。法案提出や実施時期であれこれいっても、税率1%を引き上げただけで二・五兆円もの増税となる消費税が国民生活、日本経済に与える影響を懸念する考えはみられません。それどころか、社会保障切り捨てを中心にした「歳出削減」を「消費税増税」に先行させる課題だと対置させることで、消費税増税の思惑を隠そうとしているのですから重大です。

■外堀埋める作業

 政府・与党がいま進めているのは、消費税増税の実施に向けて外堀を埋める作業です。

 自民党の武部勤幹事長は「財政再建は『増税やむを得ない』ということを国民が認めなければならない環境づくりだ。増税をお願いする環境づくりをきちっとつくったうえでなければならない」(十九日の記者会見)と発言。いま小泉内閣が「小さな政府」と称して推し進めている公務員制度改革や特別会計の見直しなどが消費税増税実施に向けたものと位置付けられています。

 自民、公明両党の〇五年度税制「改正」大綱では消費税増税について、「〇七年度をめどに、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」としていましたが、〇六年度大綱では「実現させるべく、取り組んでいく」とより強い表現にしました。

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は〇六年一月から本格的な増税議論を開始する予定。政府・与党は同年六月をめどにその増税議論も踏まえた「歳入・歳出の一体的改革」を示す段取りです。

■発言の背景には

 本格的な大増税路線に踏み出す準備をする一方で、その実施時期をめぐって発言が飛び交う背景には、国民世論を恐れていることがあります。

 〇七年春にはいっせい地方選挙、夏には参院選挙があります。とりわけ参院選挙は自民党にとって、〇一年の「小泉ブーム」で大量当選した参院議員の改選期。一連の全国選挙を前に消費税増税を実施した場合、国民の反発による苦戦も予想されることから、消費税増税の実施時期を〇八年以降に先送りして国民の審判を回避しようというわけです。(高柳幸雄)


■消費税増税をめぐる語録

●小泉純一郎首相

 「07年度に、消費税をあげるというのは、私はないと思う」(22日、記者団に)

●中川秀直自民党政調会長

 「(消費税増税法案は)とても07年の通常国会には間に合わない。07年度中に(引き上げを)実施することはできない」(18日のNHK番組)

●安倍晋三官房長官

 「できる限りの歳出削減を行わなければ、増税するという国民的な理解を得ることはできない」(19日の記者会見)


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