2005年12月30日(金)「しんぶん赤旗」
ポスト小泉“対立”演出するが…
増税・改憲同じ枠内
小泉純一郎首相が来年9月の党総裁任期満了で退陣する意向を示しているもとで、「ポスト小泉」選びが騒がれています。名前のあがる安倍晋三官房長官、麻生太郎外相、谷垣禎一財務相らに小泉首相は「私も一票あるのだから、そのときに判断せざるを得ない。誰かを応援する」と後継指名をちらつかせます。
自民党がマスメディアを抱き込んで騒ぎ立てるのにはわけがあります。
■求心力狙って
武部勤幹事長は「ポスト小泉」を決める来年九月の総裁選について「総理大臣を選ぶ選挙につながる。できるだけ国民に参加意識を強く持ってもらえるような仕組みで予備選をやっては、と考えている」(十一月二十九日の記者会見)といいます。総裁選を“国政選挙並み”に演出することで、政権への求心力を維持しようというのです。来年一月の党大会で採択する運動方針案は「総裁選を成功させ、〇七年の統一地方選、参院選の勝利につなげる」とまで掲げています。
「ポスト小泉」候補の競い合いは、その格好の演出材料になるわけですが、小泉首相が進めてきた改憲・タカ派路線や「構造改革」をいかに継承・実行させるかという狙いもあります。「ポスト小泉」候補といわれる面々の経歴と言動は、それに忠実に応えたものとなっています。
■侵略を正当化
麻生氏は、右翼改憲団体の日本会議を全面的に支援するためにつくられた「日本会議国会議員懇談会」の会長を務めた人物。その立場は外相就任後も変わりません。靖国神社の戦争博物館「遊就館」を「その時はそうだったという事実を述べているにすぎない」(十一月二十一日)と擁護し、侵略戦争を正当化。「中国脅威論」を展開して日中関係を冷えこませています。外交の「八方ふさがり」に拍車をかけている点では、小泉首相と軌を一にします。
小泉首相に「困難に直面して逃げたらだめだ」と強い期待を持たれている安倍氏は、侵略戦争への反省をくつがえすことを目的に党内に設置された「歴史・検討委員会」や、歴史教科書を偏向だと攻撃してきた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」などの中心メンバーとして活動してきました。官房長官就任時に靖国参拝について聞かれ、「私も首相と同じように国民の一人として、また政治家として今まで参拝してきた。今までの気持ちをこのまま持ち続けていきたい」(十月三十一日)と平然と答えています。
谷垣氏も「歴史・検討委員会」のメンバーでした。
■時期での違い
小泉内閣は次期通常国会に「行政改革推進法案」を提出しようとしています。教育・福祉関係の地方公務員をはじめ、国家公務員の削減などを進める法案で、小泉首相としては後継首相がとりくむ課題をあらかじめ決めておこうという算段です。
消費税増税の実施時期をめぐって一見「対立」しているようにみえる「ポスト小泉」候補たちですが、庶民大増税のレールを敷く立場に違いはありません。
消費税増税法案の〇七年通常国会提出の考えを示す谷垣氏。これに対して“まずは歳出削減”という安倍氏ですが、それは「増税するという国民的な理解を得る」(十九日の記者会見)ためという立場。麻生氏は「初めて導入するわけでもないから法案成立と同時期に(税率を)上げてもよい」(「日経」二十四日付)と、一挙に増税実施にふみきる考えを示しています。
「ポスト小泉」選びは、同じ自民党政治の枠内での争いにすぎません。