2006年1月21日(土)「しんぶん赤旗」
主張
施政方針演説
国民の側から総決算しよう
第百六十四通常国会が開会し、小泉首相が、最後の施政方針演説を行いました。就任以来四年九カ月の成果を強調し、「ここで改革の手を緩めてはなりません」と、後継者にも、国民にも、ひきつづき「構造改革」路線を押し付けようとしています。
しかし、小泉「構造改革」は、大企業の利潤追求を最優先し、それに有利な規制緩和、市場原理主義をすすめるもの。雇用と所得の破壊、福祉切り捨てなど、国民に痛みを強要し、貧困と格差を拡大しました。国民生活の現実を無視して、大実績が上がったようにいうのは、ライブドア以上の“粉飾決算”です。
■政治は何のためにある
小泉演説には、国民ひとりひとりに目を配る温かさがありません。「弱肉強食」を当然視し、切り捨ての対象とされる人々の苦しみ、悩みには無頓着だからです。
たとえば、小泉首相が「経済の活性化」の項で最初にあげたのは、「『貯蓄から投資へ』の流れを進め…多様な金融商品やサービスを安心して利用できるよう、法制度を整備」することでした。貯蓄を株式市場に回しやすいようにするということですが、まさに富裕層むけの話です。小泉政治の下で急増している、貯蓄ゼロの世帯(二〇〇〇年12・4%が〇五年23・8%へとほぼ倍加)にとっては無縁な世界です。多くの国民を踏みつけにして一部の大企業や富裕層がもうけるやり方では、真の「経済活性化」は実現できません。
雇用不安、異常な低賃金や無権利状態に、多くの若者が苦しめられ、将来への展望を持てなくされています。しかし、小泉演説には、それを打開する中身は何もありません。
そればかりか、「改革続行」を強調する小泉演説は、国民に、より大きな痛みを強いるものです。
昨年の総選挙では、サラリーマン増税はやらないと公約していたのに、「定率減税は、経済情勢を踏まえ廃止」。「消費税」を含む「税体系全体」の「見直しを行」うことも明言しました。
「年金、介護に続き、本年は医療制度の改革」だとも強調しています。その中では、「七十五歳以上の高齢者の医療費を世代間で公平に負担する新たな制度の創設」とも言っていますが、有病率の高いお年よりに現役世代と同じように負担を求めれば、病院に行けなくなってしまいます。
人間のくらし、命の重みについて、まったく思いやることをしない冷酷さです。
本来、政治が第一に考えなければならないのは、政治、経済、社会のさまざまな矛盾に苦しめられている人々に手をさしのべることです。国民の苦しみを理解しないのでは、「いったい何のための政治か」ということになります。
■深刻なゆきづまり
小泉首相は、「改革」の成果を誇りますが、外交でも内政でも深刻なゆきづまり状態です。
小泉首相は、靖国参拝問題を「一部の問題」と言いました。侵略戦争正当化の意味を持つ行動を開き直るのでは、国際政治への参加資格が問われます。けっして「一部の問題」ではありません。耐震偽装問題、相次ぐJR事故など、もうけ至上主義を助長する規制緩和は、国民の命までも脅かします。米軍基地強化や憲法改悪にむけた動きにたいし、憲法九条を守り、平和な日本をめざす国民の運動が広がっています。
小泉首相の勝手な“粉飾決算”ではなく、その実態を直視し、国民の側から総決算を突きつけましょう。