2006年1月21日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党国会議員団総会での
志位委員長のあいさつ
(大要)
二十日の第百六十四国会開会にあたって開かれた日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつ(大要)は次のとおりです。
国会開会にあたってごあいさつを申し上げます。
この国会に先立って開かれた第二十四回党大会は、歴史的な成功をおさめました。とくに、二年前に決めた新しい綱領が、党に新しい視野と活力を与えていることが、決議、報告、討論、結語、不破前議長の発言など、大会全体をつうじて明らかにされたということは、党の長い歴史のなかでも重要な意義をもつものでした。
■党大会の成果生かした論戦と活動を
この国会では、大会の成果を存分に生かした論戦と活動を展開したい、とくに私は、基本姿勢として、二つの点をまず強調しておきたいと思います。
一つは、新しい綱領と大会決議をふまえた論戦を、ということです。大会決議は、自民党政治のゆきづまりと打開の展望を、歴史問題、対米従属、財界中心――三つの異常という角度から明らかにしました。長期的視野、国際的視野で、情勢をとらえ、展望をつかむ――綱領と大会決議に貫かれているこの精神を、国会論戦でも大いに生かそうではありませんか。
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いま一つは、国民のたたかいの前進に貢献する論戦を、ということです。大会では、憲法問題、基地問題、増税問題、医療改悪の問題、雇用の問題、あらゆる分野で国民のたたかいが深いところからわきおこっていることが、かつてなく豊かに語られました。国会内の力関係だけみますと、自民、民主が圧倒的な多数を占めていますが、国民のなかでの力関係は違っています。国民のなかでは、わが党の主張が、どの分野でも多数派になりうる劇的な情勢が展開しています。国民のたたかいに連帯し、たたかいを励ます論戦をすすめようではありませんか。
■小泉「構造改革」と正面対決、人間らしい暮らしの守り手として
さて、そのうえで、この国会でとりくむ具体的な課題についてのべます。
まず、小泉「構造改革」路線――新自由主義の経済路線に正面から対決して、人間らしい暮らしの守り手としての奮闘をしたい。これが大きな課題であります。私は、この問題での対決の焦点は二つあると思います。
■規制緩和万能論――三つの害悪が明らかに
第一は、規制緩和万能論の流れとのたたかいです。これは「官から民へ」という掛け声で猛威をふるったわけでありますが、いま、その大きなほころびと破たんが次々とあらわれています。とくに三つの害悪が、誰の目にもいま明らかになりつつあります。
一つは、この流れが、国民の命を危険にさらすということです。耐震強度偽装事件に、それははっきり示されました。この問題では、当事者の責任、政治家の関与についての徹底的な糾明が必要です。
同時に、それに終わらせてはなりません。問題の根源には、一九九八年の建築基準法改悪によって、建築確認という国民の命にかかわる重大な仕事を民間まかせにしてしまった規制緩和があり、これをすすめた政治の責任が問われています。ここに問題の一番の根本があります。被害者の救済、再発防止も、この根本にメスを入れてこそ道理ある解決の道が開かれます。
二つ目は、この流れが、「モラルなき資本主義」への堕落をつくりだしていることです。それはライブドア事件に象徴的に示されています。自分の株価をつりあげ、それを元手に企業買収を繰り返す。そのなかでうその情報を流し、粉飾決算をしていたのではないか。この疑惑が大問題になっています。
これも偶然におこった事件ではありません。背景には自民党政治がすすめてきた規制緩和の路線があります。ライブドアの株価つりあげの手法というのは、だいたい三つある。株式分割、株式交換、投資事業組合――この三つの手法を組み合わせて「錬金術」をやっていたわけですが、こういう「錬金術」はこの数年来の規制緩和で自由勝手にやれるようになったものです。安倍官房長官は「小泉内閣が構造改革をすすめなければ、堀江氏は出てこなかった」とのべていますが、私はそのとおりだと思います。「人の心はお金で買える」といってはばからなかった堀江氏を、「改革の旗手」とほめそやした小泉政治の責任が問われているのであります。
三つ目に、この流れが、格差社会と貧困の広がりという事態をつくりだしているという問題であります。これはこの数年、急速に広がり、重大な社会問題になっています。ここでもその根本には、規制緩和万能論があります。とくに労働の規制緩和によって、人間らしい雇用が根底から破壊されつつあること、それに、社会保障の連続切り捨てが追いうちをかけた――これが今日の事態をつくりだした根本にあります。小泉政治の責任は、ここでも重いものがあります。
ところが、一昨日の夜の発言として伝えられていますが、小泉首相は「富裕層とそうでない層の格差が広がっているというのは誤解だ」といっている。深刻な事態への認識もなければ、ましてや責任などかけらも感じていない。これが政府の立場であります。この問題では、そもそも格差拡大と貧困の広がりという事実についての認識と責任という根本のところから、政府の姿勢をただしたいと考えています。
■「負担押しつけ王」は「史上最悪の借金王」
第二の対決の焦点は、庶民増税と社会保障切り捨てとのたたかいです。来年度予算案に盛り込まれている国民負担増は、定率減税の全廃、お年寄りの医療費値上げなどで、二・七兆円になります。小泉政権になってからの五回の予算編成で、負担増は合計十三兆円にのぼります。これだけの連続的な負担増を押しつけた首相というのは、かつてありません。まさに「負担押しつけ王」であります。
それでは、小泉内閣が作成した五回の予算案で、国の新たな借金をいくら増やしたか。二〇〇二年度予算から二〇〇六年度の予算案までの五回の合計で、国の新たな借金を百七十兆円増やし、国の借金は六百五兆円になるといわれています。
その前の五年間はどうだったのか、調べてみました。一九九七年度から二〇〇一年度までの予算の五回の合計で、新たな借金は百五十三兆円です。当時自らを「借金王」と称した小渕首相などのもとでの五年間の借金よりも、小泉首相の五年間の借金のほうが多い。これは、非常に重大な事態であり、私は、小泉首相は、まさに「史上最悪の借金王」ということも言えると思います。
なぜ「負担押しつけ王」なのに、「史上最悪の借金王」となるのか。それは、「改革」といいながら、二つの問題を聖域にして、手をつけなかったからです。一つは、空前の大もうけをあげている大企業と財界、大資産家への減税に手をつけなかった。もう一つは、巨大空港、巨大港湾、ムダな高速道路などの巨大開発のムダ遣いには手をつけなかった。この二つの問題を聖域にしながら、庶民に増税と社会保障の切り捨てを強いる、こんなことが許されていいのかが、いまきびしく問われています。
庶民増税反対、社会保障切り捨て反対、改革というのならば、この逆立ちした税制と財政にメスを入れよ――この旗をかかげて頑張りぬきたいと思います。(拍手)
党大会では、「社会的連帯で反撃を」ということが党全体の合言葉になった、これを国民全体の合言葉にしていくようなたたかいをやろうでないかと確認しましたが、その先頭にわが国会議員団が立ちたいと思います。(拍手)
■外交問題――二つの角度から世界の道理に立った論陣を
外交問題では、私たちは、二つの角度から世界の道理に立った論戦を展開したいと考えています。
■靖国参拝――居直りと既成事実の積み重ねで「解決」ははかれない
一つは、侵略戦争を正当化する異常な政治を、これ以上つづけていいのかという問題です。
小泉首相は、靖国参拝問題について、居直りの姿勢を強めています。これは「心の問題」だと言い募っていますが、問われているのは、小泉首相の「心」ではなくて参拝という行為であり、そのもつ政治的意味であります。首相は、「一つの問題で、全体を壊してはいけない」ということもいっていますが、これはあれこれの部分的な問題ではなくて、米国を含めて世界全体が戦後の国際秩序の土台としているものへの挑戦です。私は、率直にいって、この問題を、居直りと既成事実の積み重ねで「解決」できると思っていたら大きな考え違いだということを、首相に言いたいと思います。
首相の靖国参拝の問題は、これが国策として今後も固定化されるのか、それとも転換をはかるのか、今年は非常に重要な年になってきます。私たちは、国策として固定化させず、侵略戦争の反省を言葉だけではなく、行動でも示す、日本外交への転換をはかることは、政治的立場の違いをこえて、日本国民の良識を結集し、必ずなしとげなければならない大きな仕事だと考えています。そのために国会の論戦でも大いに力をつくす決意であります。
■「米軍再編」問題――自治体ぐるみのたたかいこそ勝利のカギ
もう一つは、異常なアメリカいいなり政治を、これ以上つづけていいのか、という問題であります。
この点では、イラクからの自衛隊のすみやかな撤退を、緊急の課題として強く求めていきます。同時に、「米軍再編」の名による基地強化の動き、日米の軍事一体化の動きに正面からストップをかける。これは直面する緊急の重大な課題です。
私は、この問題での勝利のカギは、いま全国各地でおこっている自治体ぐるみのたたかいを揺るがず発展させることにあると思います。「しんぶん赤旗」の調査では、全国、百三の自治体で首長もしくは議会が公然と反対の声をあげています。
日米両国政府は、この動きを一番恐れています。政府は、特別立法によって、自治体を「アメとムチ」で従わせようとしています。基地を受け入れた自治体には巨額の交付金を出す。受け入れない自治体には強権的な手法で無理やり押しつける。許しがたい卑劣な立法のくわだてであります。
しかしどんな動きを相手がしたとしても、自治体ぐるみのたたかいを揺るがず発展させれば、かならずこの動きは阻止できます。それは沖縄のたたかいが証明しています。SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意が結ばれたのは一九九六年、辺野古沖に基地建設を決定したのは九九年です。しかし、沖縄県民のたたかいはこの計画実施を阻止してきているではありませんか。自治体ぐるみのたたかいを揺るがず発展させれば、このたくらみを阻止することはできます。
わが党は、「米軍再編」の名ですすめられていることが、それこそ孫子の代まで禍根を残すどんな危険な中身かを広く明らかにして、自治体ぐるみのたたかいの発展に貢献する論戦をすすめたい。この決意をみんなで固めようではありませんか。(拍手)
■憲法改悪反対の一点で国民多数派結集へ
憲法改定問題も今度の国会での重大課題です。自民党が「新憲法草案」を党大会で正式に決定してはじめての国会となります。これまでは、首相は憲法改定の狙いをただしても逃げの一手でした。その狙いを隠し続けてきました。しかし自分の党の正式の決定として「新憲法草案」を決めた以上、そんな無責任な姿勢を続けるわけにはいきません。
「新憲法草案」は、九条改定の狙いが、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものであるということを、自ら告白する内容になっています。この点を、今度の国会で広く明らかにし、憲法改悪反対の一点での国民的多数派の結集に貢献する論戦をすすめたいと思います。
平和と外交をめぐる論戦は、この二つの角度からの複眼の取り組みが大切です。侵略戦争の正当化の流れをただす、アメリカいいなりの政治をただす――複眼の角度からのたたかい、取り組みが大切であります。
わが党はそれぞれについて、世界の道理に立った打開の方策を示しています。そして、それぞれについて一致点で多数派をつくるために力をつくします。ここでも新しい綱領と大会決議が生きてくる。その立場に立った奮闘をすすめたいと思います。
暮らしの問題でも平和の問題でも、今度の国会での論戦が、全党のたたかいの大きな励ましになるように、国民のたたかいの前進にとっても大きな貢献になるように、お互いに知恵と力をつくして頑張りぬこうではありませんか。(拍手)