2006年1月23日(月)「しんぶん赤旗」
小泉内閣 その実態
負担押し付け王
史上最悪借金王
“負担押しつけ王”であり“史上最悪の借金王”――日本共産党の志位和夫委員長は、小泉「構造改革」路線を批判するなかで、庶民増税と社会保障切り捨てをすすめる首相を、こう告発しました。その実態をみると――。
■13兆円 庶民負担増予算5回
小泉内閣のもとでの五回の予算編成で、国民負担増は合計約十三兆円にものぼります。
すでに約十・六兆円の負担増が、実行あるいは決定済み。〇六年度予算案にも、定率減税の全廃や、高齢者の医療制度改悪など、総計約二・七兆円の負担増が盛り込まれています。(図参照)
一人でこれだけの連続負担増を押しつけた首相は過去にいません。
「負担増」で思い出すのは、一九九七年の橋本内閣。消費税率の5%への引き上げで五兆円、特別減税の廃止で二兆円、医療改悪(サラリーマン本人負担の一割から二割への引き上げなど)で二兆円の、総額九兆円に及ぶ負担増でした。
回復しかけた景気に冷や水をあびせかけました。それでも当時は、家計の所得は年間五兆円から六兆円の規模で伸びていました。
これにたいし、小泉内閣となってから、国民の所得水準は年々減少しています。生活保護受給世帯は六十万世帯から百万世帯に、貯蓄ゼロ世帯は10%から23・8%にひろがるなど貧困層が拡大し、深刻な社会問題となっています。そのなかでの十三兆円超の負担増。まさに“負担押しつけ王”です。
国民にこれだけの負担を押しつけておいて財政は健全化したのかといえば、ノーです。
上の表をみてください。橋本、小渕、森の三代の内閣で、毎年つくった国の新たな借金が五年間で合計約百五十三兆円。ところが小泉内閣の五年間の新たな借金は、百七十一兆円にものぼるのです。
二〇〇〇年度の予算編成の時、小渕恵三首相(当時)は自らを「世界一の借金王になってしまった」(九九年十二月十二日)と自ちょうしました。小泉首相には自覚すらないかもしれませんが、小渕氏を上回る“史上最悪の借金王”であることは間違いありません。
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■聖域(1) 大企業と資産家減税
なぜ「負担押しつけ王」なのに「史上最悪の借金王」なのか――志位氏は二つの聖域の存在を指摘しました。
「聖域」のひとつは、空前の利益をあげている大企業への減税と、株式売買をつうじて巨額な利得を得る資産家への減税をつづけていることです。
法人税率は、八六年度の43・3%から、九九年度に30%に減税されたまま。小泉内閣で導入された大企業・資産家減税だけでも、あわせて年間二兆円を超える減税になります。
〇三年度に導入されたIT(情報技術)投資減税は〇五年度分で約五千百七十億円の減税です。〇三年度導入の研究開発減税も〇五年度分で約七千百七十億円の減税。大企業が赤字の子会社を使って、法人税を大幅に減らす連結納税制度(〇二年度導入)は〇四年度で減税額が三千百九十六億円です。
IT減税と研究開発減税の2%上乗せ分は、大企業優遇との批判をうけ、いったん廃止されました。
小泉内閣は来年度も、「情報セキュリティ投資減税」と研究開発費の増加分の5%控除と形を変えて継続する方針です。
また、〇三年に導入された株式投資関係の減税では、株式売買での利益への課税を〇八年三月まで10%に軽減しており、預貯金の利子への課税20%の半分にすぎません。貯蓄から投資へなどといって、株の“錬金術”でもうけるものを優遇する逆立ちぶりです。
■聖域(2) 巨大開発のムダ遣い
もう一つの「聖域」は、巨大開発のムダ遣いです。
小泉内閣の予算編成では、公共投資関係費は年々減っています。しかし、巨大空港や巨大港湾、大都市部の高速道路、大型ダムなどの大規模事業に、予算を集中的に投資する構図は変わっていません。
規模の面でもアメリカ、ドイツ、フランスの三倍の規模(教育、福祉施設などを除く)。財務省の主計局担当者も「依然としてわが国の公共事業費は諸外国とくらべて相当な高い水準」と述べるほどです。
来年の使用開始に向けて建設を進めている関西国際空港の二期工事(総額一兆円規模)。小泉内閣は毎年着実に予算をつけて推進してきました。現在一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力を持っていますが、実績は十万回。需要の見通しがないのに二本目の滑走路の建設を進めており、典型的なムダ遣いです。
そのほか治水・利水上の建設根拠を失った群馬県の八ツ場(やんば)ダム、環境破壊と批判の強い諫早湾干拓事業も、いまだに継続しています。
「国際競争力強化」を名目に、京浜、名古屋、阪神の「スーパー中枢港湾」整備や三大都市圏の環状道路整備などにも、大盤ぶるまいを続けています。
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