2006年1月31日(火)「しんぶん赤旗」

アスベスト被害救済法案

“疾患指定が不十分” 吉井議員指摘


 日本共産党の吉井英勝衆院議員は三十日の衆院予算委員会で、石綿(アスベスト)被害救済法案について、国の加害責任をあいまいにしたもので、救済水準も不十分だと追及しました。

 救済法案は指定疾患を中皮腫と肺がんの二疾病だけに限定しています。労災ではこの二疾病に限定せず、石綿肺など五疾病を補償の対象にしています。二十七日の予算委員会で小池百合子環境相が、石綿肺などの疾病は将来指定疾患とすることはありうると答弁しました。

 吉井議員は、石綿肺で在宅酸素療法を受けているある患者は、個人事業主の期間が長いために労災認定の補償を受けられないことを紹介。「将来ではなく、現に苦しんでいる人をしっかり救済するということでなければ、法律としては不十分だ。なぜ石綿肺などを除外するのか」とただしました。

 小池環境相は「石綿肺については専門家が検討している」と答弁。吉井議員は「石綿が原因のものはすべてきちんと救済すべきだ」と強く求めました。

 また、吉井議員は、埼玉・行田労働基準監督署が一九七六年に、曙ブレーキ工業と下請け企業のOB労働者や周辺住民を調査し、アスベスト被害の実態を国に報告していることを紹介。「緊急に調査をして因果関係を明確にし、アスベスト使用禁止を検討したのか」とただしました。川崎二郎厚生労働相は「労働基準監督署から情報提供があったのは事実」と答弁。吉井議員は「そのときに対策をすべきだった。行政の不作為だ」と国の責任をただしました。

■解説

■国と企業の責任あいまいな法案

 今国会に提出されている石綿(アスベスト)被害救済法案は、国の行政責任と企業の加害責任をあいまいにし、救済内容もすべての被害者を対象としないなど、被害者の願いに十分応えていないきわめて不十分な内容です。

 石綿被害の問題で一番指摘しなければならないのは、国と企業の責任です。一九七〇年代から、石綿使用の有害性は医学的に指摘され、国際的にも明らかになっていました。日本共産党も七〇年代から石綿使用の有害性を国会で指摘してきました。にもかかわらず、主な石綿製品の禁止措置がとられたのは二〇〇三年になってからでした。石綿使用の危険性を認識しながら、長期にわたって使用を容認してきた政府と安全対策も不十分なまま大量の石綿の製造・使用を続けてきた企業の責任は重大です。国と加害企業は責任を明確にして、労災並みの補償や飛散防止などの総合的な対策を図るべきです。

 法案で救済される対象は中皮腫と肺がんの二つに限定されています。労災で認定されている石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水の患者は対象外です。労災に認定されている疾病はすみやかに追加すべきです。

 給付内容も、いままで中皮腫で死亡した約一万人に三百万円の特別遺族弔慰金を支給し、今後四十年間で十万人が発症するといわれている石綿での中皮腫患者と肺がん患者に、自己負担分の医療費と療養手当を支給します。しかし、被害者が生活を維持するうえではきわめて不十分なものであり、労災並みの補償水準にすみやかに是正すべきです。

 さらに、同法案は地方自治体にたいし、石綿健康被害救済基金への拠出を求めていますが、すでに地方自治体は国民健康保険会計への負担などさまざまな負担を負っています。拠出金は、関係企業や規制対策が遅れた国が負担すべきです。

 同法案は、石綿での健康被害でありながら、いっさい救済されなかった工場周辺住民などの被害者遺族と労災補償を受けずに亡くなった労働者の遺族、今後健康被害が発生する周辺住民などにたいして、初めて救済対策が制度化されることになった点では、一定の前進です。

 不十分とはいえ、今回の法案による「救済制度」は国民の世論とねばり強い運動が結実したものです。すべての健康被害者の実態にもとづいた補償制度へ拡充強化をはかることが求められています。(小林拓也)


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