「しんぶん赤旗」日曜版2006年2月5日号
世界一高い学費“もう限界”
私大の平均初年度納付金が約130万円、国立大学が81万7800円―。世界一高い学費にどんな苦心があるのか。東京大学2年生の西本幸一さん(20歳、仮名)からのアドバイス―。
立花 亮記者
男子学生の悲鳴
「今日のお昼ご飯はこれです」。取り出した一袋25円のパンの耳。100円ショップで買ったジャムにパンの耳をつけてほおばりながらいいます。
「思ったより香ばしくておいしいですよ。でもこればっかりたべてるとむなしくなってきます」
昼ご飯は週2、3回はパンの耳。夕食、朝食もカップやきそばとコーンフレークなど「味よりもカロリーの高くて腹にたまるもの」がほとんどです。
たまに食べる「ごちそう」はラーメンにマクドナルド。
「エビの入ったハンバーガーを宣伝してるでしょ。あれ食べてみたいけど高くて買えません」。食費は1日200円以下という日も少なくありません。
「定期的に野菜が食べられるのは週1回バイトの家庭教師先でもらうご飯だけですね」と話します。体重は入学時から12キロも減りました。「もう少し野菜を食べないとヤバいかな」。学食は「1食300円以上かかるから食べません」。
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月々の家賃を引き、残った仕送りから、約2万5千円と週1回の家庭教師のアルバイト代などを足した月約5万円で生活しています。
ファッションには気を使わないという西本さん。200円のTシャツを着て、100円ショップで下着を買います。
散髪は年2回、渋谷で990円の店へ行くだけ。現在短髪の西本さんですが、肩ぐらいまで髪が伸びてから散髪することにしています。
広島の実家で父親と妹、祖母が暮らしています。「親は自営業者で、不況の影響もあり仕事が減っていて大変です。これ以上仕送りはもらえません」。5歳下の妹が高校受験中で、実家の生活を気にかけます。
アルバイトを増やすことは考えていません。地球のエネルギー問題を考え、将来核融合の研究者になりたいという西本さん。勉強の時間を削りたくないからです。
近々家賃2万7千円のアパートに引っ越す予定。これで数万円浮きます。西本さんは「ほとんど親に返して、負担を減らしたい。自分の生活はあと1万増えたらだいぶ良くなりますから」と話します。
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帰省は、夏と冬。運賃の高い新幹線に乗らず、「青春18きっぷ」を使って鈍行列車を乗り継ぎ、17時間かけて帰ります。
一度乗り換えを間違って、静岡で野宿したこともあります。「あの時は体中虫にさされて大変でした」と明るく語ります。
今ほしいものは何?
「教科書ですね」と即答。教科書が高くて買うことができないまま、受けている授業が少なくありません。「あと大学生協で栄養のあるご飯が食べたい」と話します。
西本さんは東京大学の自治委員として学費値下げの署名集めや国会要請などの活動に参加しています。
「黙ってないで学生の苦しい実態を政府や大学、世間に訴えていくのが大事だと思います。ヨーロッパのような学生生活を送りたいですね。学費はタダで、奨学金を生活費にあてたりしてるんですよね。それだったら学食どころか、外のお店でもご飯食べられるじゃないですか」と目を輝かせます。
黒書で分かった深刻さ 政府や社会に知らせたい 全日本学生自治会総連合
全日本学生自治会総連合(全学連)は昨年11月から、「学費・就職難黒書」を作製中です。学費についての調査で「高い」、「やや高い」は合わせて83%。「安い」「やや安い」の合計は、1%にも達しません。
「1日1食以下でどんどんやせていく」「毎晩カップラーメンをすすり、夜は暑さ寒さにおびえ、夜遅くまでのバイトで体調を崩した」「生活費を稼ぐために毎日バイト漬け。勉強する暇がなく単位を落とした」など深刻な声が自由記入欄にあります。
全学連の千葉達夫委員長(23)は、「黒書の実態を政府や社会に知らせる取り組みを広げたいと思います。学生がお金の心配をせずに学び、未来の担い手として成長することを保障するよう政府に求めていきます」と話します。