2006年2月6日(月)「しんぶん赤旗」
農業農民
収入減なのに増税
農民連が税金相談会
必要経費きちんと記帳/団地住民も参加
農民連(農民運動全国連合会)は、三月に税金の確定申告をするための「税金相談会・記帳会」を始めました。「農産物価格は下がり収入減なのに、税金は高くなるのはひどい」と庶民大増税への声がでています。農民連は、不公正な税制を正す運動をすすめ、農家が自覚的に申告する仲間づくりの運動を広げています。
埼玉県の東部にある大利根町の集会所でおこなわれた埼玉県農民連の税金相談会。松本慎一事務局長は、増税の仕組みを黒板に書いたあと、参加者に話しかけました。「今年はこれまでになく税金をとられるよ。増税路線が私たちのくらしを直撃している」
今年は、所得税・住民税の人的控除部分が縮小・廃止され、所得税の定率減税も縮小となります。一方で免税点の引き下げで新たに消費税納税を迫られる農家が増えます。(別項)
■控除が減らされ
松本事務局長は、総収入から必要経費を引いた金額から生活に必要な部分を引いた(控除した)あとの金額が課税対象となる課税所得額だと説明しました。「控除が減らされたから課税所得額が増えて大変だ。国保税や介護保険料も上がっていく。こういうときこそ必要経費を残さず記帳して、きちんと申告していきましょう」と呼びかけました。
農業を経営するときには、収入部分は伝票などでわかります。しかし、経費は複雑です。自宅での作業や集落での寄り合いや共同作業など“生活の中に隠れてしまう経費”があります。専用の事務所や車や機材を用意する企業とは違うところです。「乗用車だって集落の寄り合いなんか行くときに使うでしょ。減価償却を申告しなければだめですよ」と松本事務局長は強調しました。
農民連が作った「記帳ノート」では、自宅の電話代や電気料金なども実態にそくして仕事と私用を案分して記帳することにしています。
農民連の税金相談会に初参加という男性(70)は、「厚生年金は増税分が源泉徴収されており一月分を見ると受け取り額が減った。農業経費は今まで目安方式でやっていたが、それではだめだと思った」と話し、減価償却の方法を質問していました。
免税点の引き下げで消費税の課税業者となった農家は一気に重税が押し寄せます。
埼玉県では、売り上げ一千万円を超える専業農家に税務署の事前調査がおこなわれる例も出ています。調査があった農家(60)は、「消費税分が売り上げに上乗せできないが、農民連の計算の仕方だと経費もはっきりして納得できる」といいます。
農民組合大阪府連の田中豊書記長は、夫婦と両親で野菜をつくる専業農家がこれまでの十一倍の増税になりそうだと語ります。「老年者控除廃止と消費税納税義務の発生の結果だが、二十三年間税金相談をやってきたがこんなことはなかった。これで消費税率が上げられるとなると農家は耐えられるのか」と心配し、「増税反対の声を大きくしなければいけない」と訴えます。
■ビラで呼びかけ
農民連の会員だけでなく、地域の人にも参加を呼びかけています。
岡山県では、非農家の団地住民にも税金相談会のお知らせビラを配布したところ、十一人が参加しました。同県農民連の坪井貞夫書記長は、老年者控除廃止と年金控除の縮小が高齢者世帯に大きな打撃になっていると実感しました。「重税にストップをかけないと本当に大変だ」と話します。団地住民は農民連の準会員として活動することになりました。
毎年、税金の相談会・記帳会の開催ビラを新聞折り込みなどで幅広く呼びかけている茨城県農民連の村田深書記長は、「農家の経費の計算の仕方や控除方法で正しい情報が伝わってないことも多い。自主申告で税金が戻ってくることもある」と言います。相談会を通じて農民連の仲間を広げる構えです。
農民連では、三月十三日の「重税反対統一行動」にむけ全国で宣伝と対話を広げることにしています。
■庶民増税次々に
◆所得税・住民税の人的控除廃止・縮小
(1)65歳以上の老年者控除50万円が廃止。
(2)配偶者特別控除38万円が廃止。
(3)65歳以上の公的年金控除が20万円縮小(年金収入が330万円以下の人)。
◆消費税負担増
免税点の引き下げ(売上げ3千万円から1千万円に)で、農民は全国で12万戸が消費税課税業者に。
◆定率減税の縮小・廃止
所得税は20%が減税されていたが、2006年分は10%に縮減、07年分は廃止予定。