2006年2月7日(火)「しんぶん赤旗」
ワールドリポート
ペンタゴン前、政府・議会前 無言アピールに反響
定時・定点で「戦争に反対」
ワシントン
さまざまなデモや集会が開かれる米国の首都ワシントンですが、そうした一回限りの行動ではなく、規模は小さくても、毎週決まった時間、決まった場所で、粘り強く戦争反対を訴える人たちがたくさんいます。ワシントンで取り組まれている定時・定点監視行動のいくつかを訪ねました。(ワシントン=山崎伸治)
■毎週月曜日午前七時から、ペンタゴン前
米国防総省=ペンタゴンは、米政府の戦争政策推進の中心部。その入り口で、毎週月曜、朝七時から一時間、戦争反対を訴え続けているのが、カトリックの平和組織「ドロシー・デー・カソリック・ワーカー」の人たちです。
一月の朝七時といえば、ワシントンではまだ日は昇りません。薄暗い中「人殺しの命令を拒否しよう」「米国の違法なイラク占領は戦争犯罪、罪です」と書かれたプラカードを手にした六人が、地下鉄駅やバスターミナルから入り口に向かう歩道に立っていました。
「ペンタゴン前の『ビジル』を始めたのは一九八七年です」というのは、アート・ラフィンさん(51)。「ビジル」とは、「抗議の監視行動」とでもいうのでしょうか、プラカードを掲げ、無言で訴えます。
二〇〇一年九月の同時多発テロ後は、場所を移動させられるなど、警備が厳しくなっています。この日も、ビジルを始めると、ペンタゴン警察がすぐ近くに張り付きました。写真を撮っていてカメラを没収されたことがあるといいます。
「私たちに対抗して、戦争支持のグループがやってきたこともあります」(ラフィンさん)
ペンタゴンの職員だから見向きもしないのかと思えば、「数、もっと増えているよ」と声をかける男性がいました。プラカードにあった米兵の死者数「2226」のことでした。
■毎週金曜日正午から、ホワイトハウス前
ラフィンさんたちのグループはホワイトハウス前でもビジルを続けています。「私は一九九八年二月、経済制裁を受けていたイラクに医薬品を届けました。帰国後、このビジルを始めました」とラフィンさん。
ホワイトハウス周辺も警備が厳しく、建物の真正面の歩道で横断幕を広げれば、それだけで逮捕されるといいます。ビジルは少し真正面から左よりのところでやります。
ここでは「戦争は解決策ではない」と書かれた横断幕を張ります。通りがかりの人が「その通りだよ」と激励。取材でホワイトハウスに来ていたドイツの報道カメラマンが写真を撮り、「その横断幕は中にいるやつらに見せなきゃ」と言って、ホワイトハウスを指差しました。
演説もシュプレヒコールもありませんが、人々の目には印象深く映るようです。
■毎週土曜日正午から、議会前
連邦議会の裏手正面で二〇〇二年十月十五日から毎週土曜日、「どんな天候でも」ビジルが続けられています。クエーカー教徒の人たちが中心に始めたものですが、「いろんな宗派の人が集まっていますよ」と組織者の一人ジョハネス・ウィリアムズさんは言います。
横断幕には、旧約聖書・詩篇三四編一四節の「平和を求め、それを追い求めよ」という一節が書かれています。ウィリアムズさんは「議会に向けて、『反対』だとか『糾弾』ではなくて、前向きなメッセージを伝えたい」と語ります。
ここでも参加した八人の人たちは、無言でじっと立っています。それでも議会を見学に来た人たちが足をとめて、ビラを手に取って見入る姿が見られます。「ここへ来てくれてありがとう」と言う人もいました。