2006年2月8日(水)「しんぶん赤旗」
農業者年金どう考える?
〈問い〉 私の友人は農家ですが、農業者年金にずっと加入して68歳になります。男の子がいなく、娘3人も嫁いでおり、後継者がいません。そのために彼は、農業者年金を予定した額よりわずかしか受け取っていないと聞きました。
農業者年金は後継者育成を名目とした年金で、後継者に経営を譲れないと、年金額が少なくなるというのですが、共産党はこの年金についてどのように考えているのでしょうか。(鹿児島・一読者)
〈答え〉 農業者年金制度は、経営を移譲する農民に年金を支給することで離農を促進し、農業の規模拡大につなげることをねらって1970年にスタートした制度ですが、加入者の農家にとっては、国民年金の上乗せ年金として、老後の安定にそれなりの役割を果たしてきました。
しかし、政府の農業切り捨て政策によって後継者が激減して、経営移譲の相手がいないという矛盾が広がったうえ、引退世代の年金財源を現役世代の掛け金でまかなうやり方(賦課方式)であったため、年金財政が破たんの危機に陥ってしまいました。そこで5年前、既受給者の年金額を約1割カットしたうえ、老後の年金の財源も自分で積み立てるやり方(積み立て方式)に制度を大きく転換して、存続させることになりました。
いまの制度は、一部の大規模農家や後継者に限定して掛け金の一部を国が支援するため、対象農家になればそれなりに役立つものです。
しかし、問題は、対象が狭いうえ、掛け金を払える農家が今日、減ってきていることです。農業経営が悪化し、国民年金の掛け金さえ払えない人が増えているのに、それに上乗せして農業者年金の掛け金(月2万円以上)を払うのは困難です。
また、掛け金を払い続けても、経営移譲する相手がいない場合、予定した年金額が受け取れないという問題もあります。
ご質問にある農業者年金制度をめぐる矛盾は、農家経営が成り立たず、農業者の減少が続いているところに根源があるといわなければなりません。
日本共産党は、農家の老後の安定は、後継者が安心して農業に従事できる農政を確立することが第一だと考えます。そのうえで、農家の年金も、全額国費による基礎年金の確立をはじめ、全国民の年金の土台といえる国民年金制度の抜本的な充実を基本に、農業者独自の年金制度も検討されるべきだと考えています。(橋)
〔2006・2・8(水)〕