2006年2月12日(日)「しんぶん赤旗」

どこまで広がる耐震偽装

根源に建築基準法改悪


 耐震強度偽装問題は、姉歯秀次元建築士(48)以外の偽装が福岡、熊本両県で発覚したことにより、「姉歯は氷山の一角ではないのか。いったい、どこまで広がるのか」という不信の声が広がっています。


 国土交通省は、姉歯事件を受け、木村建設、ヒューザー、平成設計、総合経営研究所が関与した物件について、関係自治体を通じて偽装の有無を調査しています。

 四社が手がけ、構造計算書などの書類が完備する物件は八百十四。このうち、姉歯元建築士が構造計算にかかわったのは二百七件で、「非姉歯」物件は六百七件です。姉歯物件のうち、偽装が判明したのは九十七件、偽装なしや建設中止が確認されたのは百八件、調査中は二件を残すのみとなっています。

■前途は多難

 一方、「非姉歯」物件は、木村建設が四百五件中二百八十八件、ヒューザーが六十三件中二十一件、平成設計が二十四件中十七件、総合経営研究所が百十五件中六十一件の計三百八十七件で偽装なし、または建設中止が確認されました。

 「非姉歯」物件の四割近くが調査中ですが、国交省は八日、福岡県春日市にあった設計会社「サムシング」(社長=仲盛昭二・一級建築士、二〇〇二年九月廃業)が木村建設施工の賃貸マンション三件について構造計算書を偽装していた疑いがあると発表。「姉歯」物件以外で初めて偽装が発覚、「偽装なしとの報告を願っていたが、非常に残念」(山本繁太郎住宅局長)と、“沈静化”を図りたかった国交省はショックを受けています。

 国交省が調査中の物件は、木村建設百十四件、ヒューザー四十二件、平成設計七件、総合経営研究所五十四件の計二百十七件もあり、今後さらに偽装が広がる可能性があります。

 さらに、同省は、「サムシング」の関与物件の把握を進めるとしていますが、サムシングの仲盛元社長自身が「過去に一万件ほど構造計算をした」とのべるなど、追跡調査の前途は多難です。しかも、同省によると、確認申請書類が保存されているのは、福岡県三十五件、福岡市四件にすぎません。

■“限界設計”

 サムシングについていえば、福岡県篠栗町のマンションの居住者らが昨年十一月、「販売の際にうたっている耐震性などが異なり、六年間、不具合に耐えてきた」などとして、約九億三千万円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴しています。

 サムシングは、建設コスト削減の中で、ぎりぎりまで鉄筋量を減らす「限界設計」で“有名”でした。住民らは、この訴訟の意義について、「耐震設計のブラックボックス(構造計算書)に日を当てる」としています。

 一連の耐震偽装問題の根源には、一九九八年の建築基準法「改正」で建築確認の検査を民間検査機関に「丸投げ」できるようにした規制緩和があります。国交省の「構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会」(座長・巽和夫京大名誉教授)は八日、まとめた中間報告で検討すべき課題として、「建築確認検査制度、特に、構造設計の審査について、抜本的な見直しを行う必要がある」としました。

 日本共産党は、当時の国会質疑で、「民間まかせでは検査の公正・中立性の確保は困難になる」「手抜きの可能性もある」と警告、唯一、法改悪に反対していました。


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