2006年2月15日(水)「しんぶん赤旗」
主張
住宅偽装
伊藤氏は証人喚問に応じよ
耐震強度偽装事件にかかわり、偽装マンションを多数販売したヒューザーの小嶋進社長を国土交通省課長に引き合わせていた伊藤公介元国土庁長官(自民党森派衆院議員)の証人喚問が、国会の焦点になっています。
自民党は政治倫理審査会(政倫審)での弁明でお茶をにごそうとしていますが、ことは住民の命と安全にかかわる問題です。伊藤氏ら与党は、証人喚問に応じるべきです。
■命踏みにじる「口利き」
伊藤氏にかけられた疑惑は、単に「引き合わせた」というにとどまりません。国土交通省にたいし口利きした疑惑がもたれています。
伊藤氏は耐震強度偽装問題が公表される二日前の昨年十一月十五日、小嶋社長をともなって国土交通省を訪れ、同省建築指導課長との面談で、問題の公表の仕方や公的資金の投入などを同社長が陳情するのに同席。その直後には、伊藤氏一人で同省住宅局長に会い、「国にも責任があると思う」と圧力めいた発言をした事実も判明しています。
当時、問題を知ったヒューザーの小嶋社長は社内で、「実際に地震で倒壊して、はじめて(耐震偽装の)事実がわかったということにできないか」とのべるなど、事実を極力隠そうとする姿勢をとっていました。
住民の命と安全が脅かされているときに、悪質な業者の意を体して、みずからの政治力をつかって行政をゆがめる「口利き」をしていた伊藤氏の責任は重大で、国民にたいする説明責任を果たす義務があります。
しかも、その後次々明らかになった伊藤氏とヒューザー・小嶋社長との深い関係は、尋常ではありません。
▽小嶋社長ら日本住宅建設産業協会の理事十数人が伊藤氏との懇談会「住宅政策研究会」をつくり、一九九九年からの五年間に一千万円を超える献金をしていた▽小嶋社長は伊藤氏の政治資金パーティーの発起人に名を連ねた▽伊藤氏の親族企業がヒューザーのマンション管理業務を受注していた――など伊藤氏が政治力を背景に巨額の資金を得ていた構図は、わいろ性さえうかがわせており、伊藤氏の責任はますます重大です。
伊藤氏は一月十九日に自民党本部で会見し、自分の行動について「口利きとは思わない」「何のことかわからなかった」と一方的に弁明しました。しかし、疑惑は晴れず、小泉首相ですらこの会見の後、「政治家は政治活動について国民に自ら明らかにすることが大事だ」とのべました。
しかし、それなら衆院予算委員会で日本共産党、民主党、社民党が求めている伊藤氏の証人喚問になぜ応じないのか。
自民党の武部勤幹事長は「(政倫審への出席は)いいんじゃないか」(十二日のNHK討論番組)とのべました。伊藤氏もこれに応じ、政倫審での弁明を申し出ました。まったく、無責任のきわみというほかありません。
■国民の前で語れ
政倫審は、国民には非公開で、議事録さえつくられず、本人が「弁明」するための場です。昨年、政界をゆるがした日本歯科医師政治連盟の旧橋本派へのヤミ献金事件がそうだったように、事件の真相解明の場にはなりえず、事件にフタをする道具立てにすぎません。
証人喚問は国会の国政調査権の行使としておこなわれ、事実を偽れば偽証罪に問われる重い場です。伊藤氏は証人喚問で国民に真実を語るべきであり、それこそ国会議員としての国民への責務です。