2006年2月17日(金)「しんぶん赤旗」
国民投票法案
自公が重要法案に絞り込み
“予算めど立てばアクセル”
衆院憲法調査特別委員会の理事懇談会が十六日開かれ、昨年十一月に行われた海外調査の報告を皮切りに、二十三日から今国会における議論をスタートさせることを確認しました。理事懇後の記者会見で中山太郎委員長は改憲のための国民投票法案について「予算が衆院を通過したところでどうするか、そこが重要だ」とのべました。
■協議会再開を確認
十五日には自民、公明両党の幹事長・政調会長が会談し、国民投票法案と教育基本法改悪案の成立に全力をあげる方針を確認しました。政府・与党が今国会の重要法案と位置付けてきた皇室典範改定案と、防衛庁の「省」昇格関連法案が先送りされる公算が出てきた中で、焦点を絞り込んだ格好です。
民主党憲法調査会関係者は「皇室典範問題が終息しつつあり、予算成立のめどが立てば、自民党は国民投票法案成立を目指しアクセルを踏みこんでくるだろう」と言います。
すでに自民党の武部勤幹事長と公明党の冬柴鉄三幹事長は八日、国会内で会談し、国民投票法案の今国会での成立に向け、休眠状態にあった与党協議会の再開を確認。十日には同協議会をスタートさせました。
民主党の側では九日の、同党憲法調査会の拡大役員会で、枝野幸男会長が「国民投票法案についての(自公からの)協議の申し入れを歓迎する」と表明。「非公式の三党協議でなく公式の場での協議に応じる」とし、参議院での協議の場が発足した時点で衆議院の協議もスタートするという方針を決めました。
十五日には公明党が党憲法調査会を開催。投票資格年齢で従来の「二十歳」とする考えを転換し、「十八歳」とするなど、民主案との具体的なすり合わせ作業に着手しました。
ここへ来て、動きが急になっているのは、今国会での国民投票法案の成立のためには、これ以上三党協議を遅らせたくないという与党側の思惑があります。
また今国会成立を目指すなら、参院側にも国民投票法案の審議機関(特別委員会)を設置する必要があります。
船田元・自民党憲法調査会会長(衆院議員)は「憲法改正に向け、通常国会で国民投票法案を成立させたうえで、政党間協議の入り口まで今年後半にはたどり着き、来年、本格的な協議に入りたい」(「読売」九日付)とのべています。
国民投票法案の協議入りを急ぐ先には、改憲案そのものの自公民協議が視野にあるのです。
■3党間では矛盾も
一方で、自公民三党間には矛盾も広がっています。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は十日、会見で「憲法を将来論じるときにこの部分(国民投票法案)を扱っておかねば憲法改正の議論が成就しない。入り口から閉じようという考えを持っていない。大いに議論したい」としつつ、「自民党政権の影の部分を追及している状況であるので、そのような中で国民投票法案ならいいじゃないかと議論できる状況になっていない」とのべました。
また、参院の民主党サイドには、前原誠司代表が自民党と変わらないタカ派改憲論、安保・外交路線を打ち出す中で、「改憲で自民党と握手することには強い抵抗感がある」(憲法調査会関係者)といいます。
自民党の青木幹雄参院議員会長も十日の与党協議会で、「民主党が乗ってこないのに、与党だけでやると言っても反発を招くだけだ」とのべています。(中祖寅一)