2006年2月22日(水)「しんぶん赤旗」
イラク少年暴行 国内で非難
“英軍の誇りをもはや感じず”
【ロンドン=岡崎衆史】英軍兵士によるイラク人少年暴行が英紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの報道で明らかになったことで、イラク南部と英国内の双方で英軍への非難が強まり、リード英国防相が非難を緩めるよう国民に呼びかける事態に発展しています。
暴行事件を受け、英軍が治安維持を管轄するイラク南部のマイサン州議会は十九日、英軍と英民間人との一切の接触停止を決定。十四日までに関係停止を決めたバスラ州議会に続きました。バスラ州では、州職員が英軍に接した場合、解雇することを決めました。
英国内では暴行報道の直後の十四日、英軍兵士のモラル低下を主要紙が一斉に批判しました。
インディペンデント紙は「容認することのできない規律の崩壊を防止する速やかな行動」を要求。ガーディアン紙は、英軍が旧バース党政権よりもましなものをもたらすと信じる人にとっても「そのような不当な暴力は恥ずべきであり、受け入れられない」と指摘。暴行にかかわった兵士を早急に処罰するよう求めました。
保守系のタイムズ紙も、「(イラクでの活動の)困難さは残虐な行為の言い訳にならない」と非難しました。
さらに、政治家や軍高官も批判や懸念を表明。クレア・ショート元国際開発相(労働党国会議員)は、インディペンデント・オン・サンデー十九日付に寄稿し、かつて世界最高の平和維持軍と誇れた英軍に対して「もはや同じ誇りは感じられない」と不信を示しました。さらに「評判の失墜はイラクとアフガニスタンで攻撃にさらされやすい状況を生み出す」と述べ、今後英軍への攻撃が激化する可能性を指摘しました。
ガーディアン紙二十日付によると、英軍のマイケル・ウォーカー参謀総長やマイク・ジャクソン陸軍参謀長も暴行事件が軍に与える影響の大きさに懸念。同紙はさらに、イラク侵略が軍の士気に影響を与えていることをウォーカー参謀総長が認めたと報じました。
軍への批判の高まりを受け、英軍当局は、暴行事件の解明に本腰を入れつつあります。憲兵隊はこれまでに、暴行にかかわったとみられる三人の兵士を逮捕し、現地のイラク人からの聞き取りも始めました。
英軍は現在約八千九百人がイラク南部に駐留し、治安維持などの任務に当たっています。