2006年2月23日(木)「しんぶん赤旗」
文化庁予算案 7年ぶり減額
ほぼ全分野でマイナスに
実演家の苦境に追い打ち
辻 慎一
二〇〇六年度の文化庁予算案の詳細が明らかになりました。それによると、来年度は千六億四千八百万円で、前年度比九億五千七百万円(0・9%)減となっています。
文化庁予算案がマイナスになるのは、一九九九年度以来七年ぶりのことです。昨年、文化庁予算の伸び率が0%であったことが問題になりましたが、いよいよマイナスに転じようとしています。
文化人の声に背き
減額になっているものは、アーツプランから名称が変わった「芸術創造活動重点支援事業等の推進」(七億三千二百万円減)、「『日本映画・映像』振興プランの推進」(二億六千六百万円減)、「埋蔵文化財発掘調査等」(一億千七百万円減)などで、芸術創造活動への支援から文化財保存まで文化庁行政のほぼすべての分野にわたっています。
増額したものとしては、子どもたちに舞台芸術の機会を提供する「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」があり、公演数が五百二十から六百六十に増えることになります。これは、関係者の要望を反映した面もありますが、すべての子どもに芸術・文化を届ける支援という点からはまだ程遠いものです。
国立美術館・博物館にかかわる「美術館・博物館等活動の推進」が十四億七千百万円の減額となっていることも重大です。国立美術館・博物館は、二〇〇一年に国立の機関から独立行政法人とさせられ、国からの助成は減る一方で、一面的な「効率性」が追い求められてきました。昨年、著名な文化人らが国立美術館・博物館を中心に文化分野への「市場原理の導入」や一律の「効率性追求」を危ぐする声明を発表しました。今回のいっそうの減額は、こうした文化人らの声に背をむけるものです。
年収100万未満倍増
昨年発表された芸団協(日本芸能実演家団体協議会)の調査でも、年収百万円未満の芸能実演家の割合が五年前に比べて6%から14・7%と倍以上にふえています。また、出演料が極端に低くなるなど若い世代でのしわ寄せがひどくなっています。一般紙でも「地盤揺らぐ芸術活動」(「東京」二日付)と書かれるように、芸術・文化活動をとりまく条件はいっそう厳しさを増しています。
文化予算の減額は、それに追い打ちをかけることになります。今回の予算案は、くらしや福祉と同じように、文化の面でも公的な責任を放棄するという小泉「構造改革路線」の姿を端的にあらわしています。
小泉首相は、かつて「世界の先進文化諸国にそん色のないような文化予算のきっかけ」をつくってみたい、と大見えを切りました。しかし、今回の予算案ではヨーロッパ諸国に追いつくどころか、もともと貧しい日本の文化予算がいっそう少なくなるばかりです。小泉「構造改革路線」からの転換は文化振興のうえでも切実な課題です。
(つじ しんいち 党学術・文化委員会事務局次長)