2006年2月24日(金)「しんぶん赤旗」

すすまぬ復興

イラク

“米主導の事業は失敗”

3時間ごとの停電 戦前以下の産油量 政府の汚職・腐敗


 三月で米軍の侵略から三年になるイラクでは、水道や電気などのインフラ整備の復興が進展せず、移行政府の汚職が深刻化し、米国主導の復興事業が破たんを示しつつあります。(松本眞志)


 二十日発のロイター通信は、イラクでは至るところで三時間ごとに停電しているとし、全土で電力を100%供給するためには五年から七年を要するだろうと述べています。同通信は、イラクの電力供給のために約十四億ドル(千六百五十二億円)を費やしている「米政府は電力の生産や活用で改善がみられるというが、イラク戦争前の水準に回復していない事実を無視している」と指摘しています。

 米国の著名な経済学者ポール・クルーグマン氏は、国際英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(四日付)で、「イラク戦争が始まってからほぼ三年たっても、石油の産出量は戦前の水準を下回っている。バグダッドでは一日平均、三・二時間しか電気が来ない。給水と衛生事業の60%が中止された」と指摘し、「イラクの復興事業は失敗した」と、ブッシュ米大統領の失政を批判しました。

石油施設の破壊

 イラクの石油生産が回復しない背景に、石油にからむ政府内の勢力と武装勢力との結びつき、武装勢力による石油関連施設などの破壊があると米紙ニューヨーク・タイムズ(六日付)は指摘しています。

 同紙によると、イラク北部のキルクークとバイジを結ぶ重要な石油パイプラインの防衛の任務にあたっていたスンニ派の国民議会議員、ムシャーン・ジュブリ氏が施設の防衛費数百万ドルを着服し、その一部を武装勢力に渡していたとして起訴されました。

 また、キルクーク付近の石油貯蔵所の所長が従業員や警察官数人とともに、武装勢力による今月初めの貯蔵所への迫撃砲攻撃をほう助したとして逮捕されました。この攻撃で、北部地域のすべての石油関連活動が停止したといいます。

 武装勢力とつながったバイジの石油精製施設の幹部が石油を闇に流したり、武装勢力が輸送トラックを襲って石油を奪うなどの事件も頻発しています。移行政府のアリ・アラウィ財務相は、「これらの石油の量はナイジェリアの(石油生産)レベルに匹敵し、国の安全を脅かしている」と嘆いています。

軍事費で詐欺も

 イラク政府の汚職・腐敗は石油がらみだけではありません。昨年八月には国防省で十三億ドル(千五百三十四億円)の軍事契約費にからんだ詐欺事件が起きています。イラク社会公正委員会は、ほかに四百五十件で関係者が起訴され一千件以上が調査中だとしています。

 イラク駐在の米国人やイラク当局者は「汚職・腐敗の規模があまりにも大きいだけに、イラクの経済復興に深刻な脅威となっている」と懸念しています。


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