2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」
主張
予算案衆院通過
格差拡大政治の転換を
二〇〇六年度予算案が衆院本会議で自民、公明両与党の賛成で可決されました。
国民の所得が落ち込み、貧富の格差の拡大が深刻な問題となっているにもかかわらず、小泉内閣は総額三・四兆円もの増税となる定率減税の全廃を盛り込みました。医療をはじめ社会保障でも、国民に大きな負担増を押し付けようとしています。
これとは対照的に、史上最高の利益を上げている大企業には大盤振る舞いです。定率減税と同時にスタートした法人税率の引き下げ措置を「恒久化」し、研究開発減税やIT(情報技術)投資減税は形を変えて継続しています。
史上最悪の借金王
回復とは程遠い家計への負担を大幅に増やし、大もうけで巨額の余剰資金を抱える大企業には至れり尽くせりの減税措置―。これほど逆立ちしたやり方があるでしょうか。
小泉内閣は「財政が大変だから」と国民への負担増を当然のことのように言っています。それなら、採算の立たない高速道路の全面建設、需要のない関空二期工事、無駄なスーパー中枢港湾や巨大ダム事業の推進をやめることです。何より、大企業や大資産家へのゆきすぎた減税を改めなければ筋が通りません。
大企業の利益は最高なのに、法人税収は最高を記録した一九八九年の十九兆円を六兆円から八兆円も下回った水準が続いています。この間に法人税率が10%も引き下げられ、連結納税制度の導入や研究開発減税など、大企業向けの手厚い減税措置が相次いで取られたからです。
税金を負担する力の大もとは所得です。空前の所得を上げている部門に減税し、所得を減らしている家計の負担を増やす本末転倒のやり方では財政は立て直せません。実際に、「構造改革」の名で本末転倒の国民負担増、大企業・大資産家減税を続けた小泉内閣の五回にわたる予算編成で、国の借金は新たに百七十兆円も増えています。
「世界一の借金王」と自ら称した小渕首相の在任期間を含む、小泉内閣以前の五回の予算で増やした新たな借金は百五十三兆円です。小泉首相は、この記録を更新し、「史上最悪の借金王」の座に上りました。
小泉内閣は「国際競争力を付けるため」だと説明して法人減税を合理化しようとしてきました。しかし、昨年の輸出はバブル期から倍加し七十二兆円に膨らんでいます。ブラジルやロシアのGDP(国内総生産)と同じ規模です。世界最大の米国市場では日本車の市場占有率が三割を超えて増加しています。日本の大企業の国際競争力は強すぎるほど強いのが実態です。
負担の面から見ると、日本企業の税と社会保障の負担は、GDP比で欧州諸国の五割から八割の水準に抑えられています。度を越した大企業優遇を改めて、せめて欧州並みに企業負担を引き上げることに何ら無理はありません。
小泉改革に終止符を
最近の世論調査によると、大多数の人が所得などの社会的格差が拡大したと判断しています。一月発表の「毎日」調査では、七割の人が格差社会は「問題だ」と考え、税金や社会保障制度で豊かな人から貧しい人への所得の再分配を強めるべきだと答えています。
国民のくらしが危機に陥ったときに、その危機を取り除き、不安を解消して社会の安定を図ることこそ国の財政の使命です。社会的格差と貧困をいっそう広げる小泉「構造改革」に終止符を打つことが必要です。