2006年3月4日(土)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
医療改悪法案 制度を根本破壊
小池氏追及
「保険でみる努力」放棄
三日の参院決算委員会で、日本共産党の小池晃政策委員長は、保険のきかない医療を拡大する医療改悪法案が日本の医療制度を根本から破壊する法案であることを具体的に追及しました。
保険外の医療拡大
相次ぐ制度改悪に伴い、現在の医療制度のもとでも、差額ベッドなど保険外の患者負担は増えています。
小池氏「いったい保険外の負担はどれほどの規模か」
川崎二郎厚労相「全体の規模は把握していない」
小池氏「把握すらしていないのは大問題だ」
小池氏は独自の試算に基づき、保険外の負担が二兆四千億円(二〇〇三年)にのぼることを明らかにしました(二年に一回実施している中央社会保険医療協議会の「医療実態調査」から)。この統計に含まれない大衆薬などを加えれば、実際の保険外負担はもっとふくらみます。
今回の改悪法案には保険のきかない医療を認める「混合診療」の拡大につながる条項が盛り込まれています。小池氏は、「この道を進めば公的保険での患者負担が増えるだけでなく、保険外の負担は歯止めなく増えていくことになる」と追及しました。
命の選択肢なくす
小池氏が、米国系保険会社「アリコ」の新聞の全面広告をかざすと、議場が「そんなものがあるのか」とざわめきます。
小池氏「民間保険に入って高い保険料を払わなければ、まともな医療も受けられなくなる。日本の医療をそんな姿にしてしまっていいのかが問われている」
小泉純一郎首相「先進医療、海外の薬を使いたい人は保険で払われている医療が全部自己負担になる。それじゃ困るから混合診療を認めた」
小池氏「それは保険でみたらいい」
小泉首相は「全部保険でみるといったらどれだけ金がかかるのか」と本音をもらし、「負担ばかり強調する偏見と誤解に満ちた質問だ」と居直りました。
小池氏はこれに対し、「共産党だけの主張ではない。多くの医療関係者の声だ」と反論。高度な医療は現行の特定療養費制度で対応できる事実をあげ、こう迫りました。
「支払い能力のある人の選択肢は広がるかもしれないが、支払い能力がなければ、命の選択肢すらなくなることになる。保険でみる努力を投げ捨てていいのか」
背景に財界の要求
医療改悪の旗振り役はいったい誰か―。小池氏がまっさきにあげたのは日本の大企業と財界です。
混合診療を推進している内閣府の規制改革・民間開放推進会議の議長の宮内義彦オリックス会長は、インタビュー記事(別項)で、「公は保険、民は自由診療で」と公言しています。小池氏は「オリックスは民間保険を売っている。自らが議長となって混合診療の旗を振るのは利益誘導だ。なぜ彼らのもうけのために国民に負担増を押しつけなければならないのか」と主張し、法案の撤回を求めました。
宮内義彦オリックス会長の発言
(『週刊東洋経済』2002年1月26日号)
医療イコール保険だけではなく「自由診療も認めよ」という考え方です。公は保険、民は自由診療で、公民ミックスで多様な要求に応じればよい。
国民がもっとさまざまな医療を受けたければ「健康保険はここまでですよ」、後は「自分でお払いください」というかたちです。金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。
これが医療関係者の声
「混合診療」を批判した小池氏の質問にたいし、小泉首相は「負担ばかり強調する誤解と偏見に満ちた質問だ」と答弁しました。どちらが偏見に満ちたものか―。
日本医師会はホームページで、「混合診療の容認に反対します」と表明。「お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません」「高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは、すべて保険適用するのが筋です」と主張しています。
日本看護協会も「本来保険適用すべきものまでを安易に混合診療の対象とすることや、ルールなき混合診療の全面解禁について反対」(二〇〇四年十二月二十日)と声明を発表しています。
日本病院会も声明で「これ(混合診療)を認めることは、医療に関する国の全面的な関与を否定することにつながる」(〇四年十二月二日)と反対。日本患者・家族団体協議会も「医療を受ける当事者として、混合診療解禁と特定療養費拡大に反対」との決議(〇四年十二月)をあげています。
小池氏の言うように、混合診療反対は多くの医療関係者の声です。
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