2006年3月4日(土)「しんぶん赤旗」

光州事件関連者 勲章はく奪へ

加害者は不正蓄財

被害者は精神的後遺症・貧困


 【ソウル=面川誠】韓国政府は全斗煥、盧泰愚両元大統領らに授与された勲章をはく奪することを決めました。一九八〇年に民主化を求める市民に軍が無差別発砲し多数の死傷者を出した光州民衆抗争(光州事件)当時、両元大統領らが軍の責任者だったことが理由。はく奪対象者は六十一人に達します。二月二十七日の行政自治省と与党「開かれたウリ党」の協議で決まりました。近く閣議で正式決定します。

 全、盧両元大統領は「戦時やこれに準じる非常事態下で戦闘に参加し、大きな功績を立てた者に授与する」とされる「太極武功勲章」などを受けています。韓国政府は、大統領に授与される「無窮花大勲章」を除き、すべてをはく奪する方針です。

 光州民衆抗争の精神を継承するため九四年に設立された5・18記念財団、5・18民主化運動負傷者会などは二十八日に共同声明を発表。「鎮圧当事者らの叙勲はく奪決定を歓迎する一方、同時代を生きる者として、二十六年前の苦痛の記憶を抱えて生きている5・18の当事者、家族の苦しみを全斗煥、盧泰愚ら鎮圧当事者が理解することを願ってやまない」と訴えました。

 光州事件を経て政権を握った全斗煥独裁政権は八七年に民主化運動によって倒れました。九〇年に光州事件被害者への国家補償が始まり、政府が顕彰する「国家有功者」として名誉を回復。九六―九七年の裁判では全、盧両元大統領の有罪が確定しました。しかし、被害者の生活には今も苦しみがつきまとっています。

 5・18記念財団が一日に発表した報告書によると、光州事件の被害者や家族、遺族の四割が国民基礎生活保障法による最低生計費(四人家族で月百十七万ウォン=約十四万円)未満で暮らしています。

 被害者の64・5%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられる症状に苦しんでいるといいます。

 その一方で、全、盧両元大統領らは、権力の座にいたころの不正蓄財による巨額の隠し資産が問題にされています。九七年に大法院(最高裁)は不正蓄財に対する追徴(没収)判決を出しましたが、両元大統領は資産を他人名義にするなどの方法で一部の資産を温存しているといわれます。


 光州事件 一九八〇年五月、韓国南西部の光州市で起きた民主化要求運動に対する弾圧事件。七九年十月二十六日、軍事独裁を続けた朴正熙大統領が暗殺され、全土に民主化運動が広がりました。八〇年五月十七日、軍の実権を握っていた全斗煥らは戒厳令を全土に拡大し、民主化運動家を拘束。光州市では十八日から大規模な街頭行動が始まります。二十一日に軍の無差別発砲で多数の市民が死亡し、市民側も武装。いったん市外に撤退した軍は二十七日、最後まで武装解除を拒否した市民が立てこもる全羅道庁に突入して鎮圧、最終的に二百人以上の死者を出す惨事となりました。九七年に全斗煥に無期懲役、盧泰愚に懲役十七年が確定(のちに特赦)。


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