2006年3月7日(火)「しんぶん赤旗」
働くルール変えよ 米が要求
残業代なし 対象拡大
派遣社員のまま 継続
米国が日本の内政に注文をつける「日米投資イニシアティブ」の実務者会合が昨年末開かれ、米側が、労働法制の規制緩和を要求していたことがわかりました。労働者派遣法の規制緩和、残業代の支給対象外とする従業員の範囲の拡大が含まれています。
昨年12月に日米会合
会合は、昨年十二月二日、東京で開催されました。日米の両政府をはじめ、双方の民間企業団体も出席しました。
米側が要求した労働法制の規制緩和の内容は、在日米国商工会議所の政策提言書「労働の可動性を高める」(二〇〇四年八月十日)を基調にしています。「労働者派遣法の規制をより緩和する」「雇用関係における契約の自由の明確化の促進」「残業手当資格の対象外とする従業員の範囲の拡大」が柱です。
現行派遣法では、派遣社員を一定年限(製造業では一年)を超えて働かせるときは直接雇用を申し出る義務が派遣先企業にあります。米国商工会議所は、「義務の廃止」を要求しています。
また、米側は会合で、「法的保護は与えられているが、柔軟性のない労働者は求められている人材像ではない」として、労働法制による規制を敵視しました。その上で、米側が求めるのは「自立的で活気にあふれ、組織に貢献できる労働者である」と強調しました。
この会合で出た「人材像」は、今年一月末の厚生労働省の「今後の労働時間制度に関する研究会」報告にも色濃く反映しています。報告は、「自律的に働く」労働者のための制度と称して、ホワイトカラー層を労働時間規制の対象から除外し、残業代を不払いにするとしています。
米側は、昨年九月の厚生労働省の「労働契約法制」研究会報告についても、注文をつけ、「改正」を要求しました。報告は、解雇の金銭的解決制度による労働者の解雇の自由化をはじめ労働法制の重大な改悪を含んでいます。在日米国商工会議所は、一九九九年にも、解雇の制限をはずすよう、要求していました。
明白な内政干渉
日本政府は、来年の次期通常国会に、労働基準法などの「改正」、労働契約法の新設のための法案を提出する予定で作業を進めています。
「投資イニシアティブ」の会合で、米側が、労働法制の規制緩和を全面的に求め、その一部が明らかになったのは初めてのことです。法案の国会提出をにらんでの米国の内政干渉であることは明白です。春には、作業の進行を点検するための会合を開き、夏には、「二〇〇六年報告書」にまとめます。
「日米投資イニシアティブ」は、「規制改革および競争政策イニシアティブ」と並び、二〇〇一年の小泉首相とブッシュ大統領の合意で設置されました。
米国が要求したものが数年後には実現するという、異常な内政干渉のシステムが一九九〇年代を通じてつくりあげられており、投資イニシアティブもその一つです。
今国会で審議中の「医療制度改革」法案に盛り込まれている混合診療の本格的導入の問題でも、米側の介入が明らかになっています。昨年一月と五月の会合で、米側が混合診療の解禁と株式会社の参入を要求し、七月の「二〇〇五年報告書」で判明しました。与党大綱が出された(昨年十二月一日)翌日の今回の会合でも米側は「医療制度改革」に注文をつけています。