2006年3月9日(木)「しんぶん赤旗」
「市場化テスト」とは?
〈問い〉 政府・財界が始めている「市場化テスト」とはどういうものですか?(東京・一読者)
〈答え〉 「市場化テスト」は、公共サービスの提供について行政機関と民間企業で競争入札を実施、価格と質の面で優れた方が落札し、その担い手を決めていく制度とされています。
「官から民へ」の名のもと、これまでも、公共施設建設などに民間のノウハウを活用するPFI制度、自治体の公共施設の管理・運営に民間を参入させる指定管理者制度などが導入されてきました。「市場化テスト」は、これらの制度では限界があるとの財界の意向を受け、「小さくて効率的な政府」実現のため、「民間開放の横断的かつ網羅的なツールとして強力に実施」(05年9月27日規制改革・民間開放推進会議)する切り札、公務員削減の有力な手法として登場しました。05年度には、ハローワークの運営、国民年金保険料の徴収などがモデル事業として行われ、自治体窓口業務などにも広げようとしています。
2月に提出された「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案」(市場化テスト法案)は、国等の「関与その他の規制を必要最小限」と明記、法令に特例を設け、現在は官でなければ実施できない業務に民間が本格参入できるようにします。「民間事業者の創意と工夫を適切に反映させる」、入札対象業務等を定める基本方針は「民間事業者の意見を聴く」、強力な権限をもつ「官民競争入札等監理委員会」の設置等々の民間重視の措置や、基本方針を内閣主導で作成する等が盛られています。国民の生命、財産を守る諸制度の規制緩和が進み、耐震偽装などのような質よりもコスト中心の運営が進められることになりかねません。
「官業の開放」で、「100年に一度 50兆円のチャンス」(日経BP社『パブリックビジネス・リポート』)などと宣伝されていますが、国民は、公共サービスの提供を受ける立場から、サービス提供を受ける契約者の立場に転換させられ、住民生活を守る行政の責任も放棄させられます。民間のもうけのための新たな負担増、官民の賃下げ競争、民営化による公務員の処遇、喪失した官の仕組み再構築の困難性なども危ぐされています。(進)
〔2006・3・9(木)〕