2006年3月10日(金)「しんぶん赤旗」

米軍再編 地元同意なしで最終報告へ

住民の意思はつぶせない


 日米両政府が在日米軍再編に猛反対する地元自治体との合意を断念し、三月末から四月初めにも「最終報告」をまとめる動きが出ています。地元の意向にかかわりなく、結論を出す姿勢を示すことで、反対世論を抑え込もうという思惑があります。しかし、こうした姿勢は「地元との調整を完了する」(昨年十月の日米共同文書)とした、みずからの誓約をも裏切るものです。

政府の主張を覆す

 安倍晋三官房長官は記者会見で「一日でも早く地元の合意が得られればいい」としつつも、「最終合意については、日米で協議が調い次第、それが最終合意ということになる」(六日)と述べました。在日米軍再編についての「最終報告」前に、地元自治体の同意は不要との考えを示したのです。

 また、神奈川新聞(八日付)などは「日米合意優先で決着へ」との見出しで、四月上旬にも麻生太郎外相と額賀福志郎防衛庁長官が訪米し、日米の外交・軍事の閣僚級協議(2プラス2)を開き、「最終報告」をとりまとめるという政府方針を固めたと報じています。

 在日米軍再編で対象となっている基地を抱える自治体は、北海道から沖縄まで、全国で五十五自治体に及びます。そのほとんどの自治体から「ミサイルを撃ち込まれても阻止する」(星野勝司座間市長)など一斉に反対の声があがっています。沖縄県民総決起大会(五日)に三万五千人が結集したことに示されたように、その声は衰えていません。

 その自治体の同意なしに、日米両政府が強行するというのは、これまでの政府の主張を二重に覆すものです。

「確約」もほごに

 小泉純一郎首相はかつて「政府は自治体に事前に相談し、自治体がOKした場合には米国と交渉する」(二〇〇四年十月)と表明したものでした。ところが、自治体の相談なく、昨年十月、在日米軍再編についての共同文書に合意してしまいました。

 しかし、その共同文書であっても「(日本の)閣僚は、地元との調整を完了することを確約する」として、「(最終報告を)二〇〇六年三月までに作成する」と定めています。だからこそ、政府は三月末までの「最終報告」の策定に向け、全国の自治体への説明行脚を繰り返したのではなかったのか。

 首相の言明も、共同文書の「確約」もほごにせざるをえない――。浮かび上がるのは、安保条約に賛成する保守の自治体の同意をも得られないほどの再編計画の無法さです。

命を危険にさらす

 中国新聞は社説で、今回の政府の方針を「許されぬ『見切り発車』」と批判。「日々、騒音に向かい合い、事故の不安に直面するのは、そこで暮らす人々だ。万一の場合、命の危険に真っ先にさらされるのは、沖縄や岩国などの基地周辺の人々である」(九日付)と指摘しました。

 沖縄タイムスも「国内世論を無視してまで米国との関係強化を推し進める小泉純一郎首相の『対米従属』の姿勢は異常にさえ映る」(九日付社説)と批判しています。

 政府は、一九九六年の日米合意にもとづき、沖縄・辺野古沖への米軍新基地建設計画を推進してきました。しかし、地元住民の反対の声まで押しつぶすことはできませんでした。十年たっても、海上にくい一本打つことはできませんでした。

 住民の同意をも得られない無法な基地押しつけ――。その破たんは、避けられません。(田中一郎)


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