2006年3月13日(月)「しんぶん赤旗」

シリーズ 許すな! 大増税・大負担増時代

消費税負担に悲鳴 これは“営業破壊税”


 税務署の窓口には多数の中小業者が相談に並びます。各地の民主商工会には中小零細業者から「赤字なのに消費税を払ったら、生活できない」など切実な声が多数寄せられています。消費税の申告期限を今月三十一日に控え、一体何が起きているのでしょうか。(山田英明)


免税点引き下げで対象者増

 異常な事態が起こっているのは、二〇〇三年度税制「改正」で、それまで課税売上高三千万円だった消費税の事業者免税点制度の適用上限(免税点)が、一千万円まで引き下げられたからです。

 〇五年一月から新たに消費税の課税業者になり、初めて申告期限を迎える個人業者は百二十二万業者に達する見込み(〇六年三月、国税庁の推計)です。消費税が課税される個人事業者全体の実に73%を占めています。

 課税事業者数は、個人事業者と法人をあわせて三百八十二万件(同推計)まで増加しました。

“払いたくても払えない”

 「いきなり二十七万円の消費税。軽油の値上がりとともにダブルパンチ」(運送業者)、「赤字なのに消費税十六万円」(青果業者)―。中小零細業者から悲鳴が上がっています。

 「払いたくても払えない」。これまでも消費税の課税事業者だった東京都内で古書店を経営する立山明さん(62)=仮名=は話します。すでに三百二十万円の消費税を納めきれていません。

 「小泉さんが総理大臣になったころから経営もうまくいかなくなってきました。売り上げはこの四、五年の間に半減しました」。売り上げ減と資金繰りの悪化で、以前は五店舗あった店舗も今は直営店は一店舗のみになりました。現在の売り上げは全体で年間約二千五百万円。しかし人件費や店舗の家賃などがかさみ、今も経営は赤字です。

 「手元に残る金なんてほとんどありません。3%のころは金を残せましたが、5%になってからは、消費税を払うことができません」。立山さんは憤りました。

 「生活費を切り詰めるしかありません」。東京都内で夫(72)が司法書士事務所を経営する竹田好美さん(71)=仮名=は嘆きます。免税点の引き下げで、新たに消費税の課税業者になりました。税務署に納める消費税額は約二十七万円になります。

 事務所の昨年の収入は約千三百万円。「二人の所員の人件費や事務所の家賃、リース代などの経費を合わせるとちょうどそのくらいになります」。昨年は赤字でした。所得税は課税されません。「それなのに、消費税はとられます」

 事務所経営による利益はゼロ。家計は、二人合わせて月四十万円の年金で切り盛りしています。「支払う消費税は生活費から持ち出しです。その上、年金にかかる税金も増えていますから、家計の収入は激減です」

価格転嫁できない 中小零細業者

 なぜ、中小零細業者の営業に消費税が重くのしかかるのでしょうか。事業者が「売り上げの消費税」から「仕入れ・経費等にかかった消費税」を差し引いて申告・納税するという消費税の仕組みそのものに問題があります。

 事業者が、消費税分を取引先や消費者から完全にもらえれば、自ら身銭を切って納税する必要はありません。

 大手業者は、消費税をモノやサービスの価格などに完全に上乗せした上に、コスト削減や仕入れ価格の抑制によって利益を得ることができます。

 しかし、中小零細業者は、厳しい価格競争や大企業による下請け単価たたきの下、厳しい営業を強いられています。多くの場合、消費者や取引先などとの関係で、消費税をもらうことができません。それでも、消費税は、売り上げがあれば、納税義務が生じます。

 さらに消費税は、複雑な計算やめんどうな事務負担を伴います。

 免税点制度は、こうした中小業者の負担を軽減するために設けられました。売り上げが一定規模以下の事業者の納税義務を免除する制度です。

 全国商工団体連合会政策担当の牧伸人さんは「中小零細業者にとって、免税点制度が欠かせないものになっています」と語ります。

 〇三年度税制「改正」議論で、免税点引き下げが取り上げられた〇二年当時、日本商工会議所も、「価格競争が激化している中にあって、小規模零細事業者である免税事業者は、仕入れに係る消費税分の価格転嫁がより困難になっている」(〇三年度中小企業関係施策に関する要望、〇二年六月)と、免税点の引き下げに反対していました。

 中小零細業者の景況感は、依然低迷しています。牧さんは「免税点の引き下げが中小業者に大変な負担増をもたらしています。消費税が中小零細業者の営業を破壊しているという実態を多くの人に知ってもらいたい。もちろん、消費税増税はやめさせなければなりません」


きょう重税反対全国統一行動

 重税・庶民大増税に反対―。3・13重税反対全国統一行動(同実行委員会主催)が13日、全国520カ所で取り組まれます。

 同実行委員会は、重税・庶民大増税に反対する世論と運動を広げ、重税政策を転換し、庶民大増税計画を阻止するために「国民の皆さんの積極的な参加と賛同を」と呼びかけています。



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