2006年3月19日(日)「しんぶん赤旗」
強まる検定圧力
歴史教科書シンポ 寡占化進行も指摘
歴史研究者や教科書編集者らによる「歴史教科書いままでとこれから」と題するシンポジウムが十八日、東京都内で開かれ、約百人が参加。検定や採択制度、今年から使われる各社の教科書の内容などについて議論しました。
出版労連教科書対策部の吉田典裕事務局長は、教科書検定制度が改悪され、かつてあった「条件付き合格」が廃止され、日程も短縮される中で検定の圧力が強まっているとのべました。また、現場教師の意見が排除され、広域で同じ教科書を採択する仕組みになっているため、一部の教科書会社だけに採択が集中する寡占化が進行し、多様性が奪われていると指摘。教科書の採択にかんして出版社による接待などを禁じた「特殊指定」が廃止されれば、大手出版社がいっそう有利になり、寡占化に拍車がかかるとのべました。
高校の世界史教科書を執筆している西川正雄東京大名誉教授は、アジアへの日本の加害の記述が後退したことについて、文部科学大臣が「執筆者・編集者の考えだ」と述べたことを批判。イラク戦争にかんする記述を何度も書き換えさせられた体験を語り、「書き直さなければ教科書が出せなくなる。事実上の強制だ」と述べました。
歴史教育者協議会の石山久男委員長は中学校教科書の検定について報告。アメリカのイラク攻撃について「国連決議のないままに」と書いた部分が削除されたり、自衛隊派遣について「戦地であるイラクに」と書いた教科書が「『非戦闘地帯』に」と書き直された例を示し、「政府の見解だけを書かせる検定が行われている」と述べました。